こんにちはゲストさん
トップ
富山のいま
深く知る
全国・海外のニュース
社説・コラム
特集
連載
おくやみ
募集・投稿内容
記事データベース
ホーム > 社説 > 民俗行事/伝統守るため知恵絞ろう

社説

民俗行事/伝統守るため知恵絞ろう

2010年01月19日 01:42
 入善町上野(うわの)邑町(むらまち)に江戸後期から伝わる「塞(さい)の神まつり」が国の重要無形民俗文化財に指定されることになった。地区の男子児童による厄払いや五穀豊穣(ほうじょう)を祈願する火祭り行事で、指定を心から喜びたい。だが、こうした民俗行事の存続が危ぶまれている所もある。南砺市利賀村上村地区の「初午(はつうま)」である。過疎化などのため児童数が足りず、来年以降の実施が危惧(きぐ)されている。このため、地区出身者の子どもたちに協力、参加を呼びかける案も上がっている。貴重な伝統を今後も継続できるよう知恵を絞りたい。

 初午は養蚕の振興と家内安全などを願う新年の恒例行事で、国選択・県指定無形民俗文化財となっている。祝詞をあげる神主役の児童や馬役の2人ら最低でも5人が必要だ。今年は6人だったが、うち3人が今春小学校を卒業し、来年は新1年生が1人だけと人数が不足する。

 かつては下村(したむら)、岩渕両地区でも行われ、3年生から6年生の男児が対象で、戦後は上村地区だけでも20人前後いたという。過疎化と少子化が進んで、1年生から参加するようになり、女子児童も加わったものの、平成11年までには下村、岩渕両地区とも中止に追い込まれている。

 利賀地域は現在人口768人。平成16年の合併時の913人から大きく減少している。利賀小学校の児童数は33人で、上村地区は5人だけだ。今年の行事には父親が上村出身で砺波市に住む6年生児童1人が参加した。

 行事の継続に苦心しているのは、約300年の歴史を持つ黒部市宇奈月町の国重要無形民俗文化財の「明日(あけび)の稚児舞」でも同じだ。舞を披露する4人の男子児童を集めるのに、地区の子どもでは足りずに、出身者の子どもに広く協力を得るなど四苦八苦しているという。

 今回国の指定を受ける「塞の神まつり」でも、20年ほど前までは10人以上の児童が参加していたが、現在男子児童は5人だけで、少子化の影響は各地の行事で顕在化している。

 とりわけ、利賀地区は日本の山村独自の暮らしを色濃く残してきた土地柄である。伝統が途切れてしまうのはそこに暮らす人々の歴史や文化の痕跡を失うことだろう。このまま手をこまねいているわけにはいくまい。

 現在の神事の様態をそのまま残すことは難しいかもしれないが、明日の稚児舞同様、地区出身者の子どもが加わっていくことも一つの方策ではなかろうか。参加児童の年齢を引き下げ、女子にも門戸を開放してきたように、中学生にも参加の機会を広げてはどうか。小学生だけで守られてきたのが崩れてしまうという懸念もあろうし、中学生の人数も多くはないかもしれないが、年齢制限を緩やかにしてもいいのではないか。何とかして古式ゆかしい行事を残したいものだ。

 貴重な民俗行事を有する行政は地区民任せではならない。住民の定住策を推進するとともに、地区の伝統行事を守る方策を考えてほしい。歴史、文化を継承していくことも大事な務めであるはずだ。

社説