2010年1月19日(火) 東奥日報 社説



■ 教育には「ゆとり」が必要/教職員の定数増

 2008年度に、うつ病などの精神疾患で休職した公立小中高校などの教職員は、全国で5400人(本県は55人)にも上った。前年度より約400人増え過去最多を更新。増加は16年連続である。

 文部科学省が調べたもので、調査を始めた1979年度の約8倍にもなった。病気休職者自体が8578人(同122人)と最多を更新した。この63%が「心の病」にかかって休んでいる勘定になる。

 政府は10年度予算案に、公立小中学校などの教職員の定数を純増させることを盛り込んだ。純増は03年度以来という。

 児童生徒数などを基に算出される教職員定数は10年度の場合、09年度より3900人減少するはずだったが、定数改善で4200人を上積み。差し引き300人の増加となる。

 民主党は政権公約(マニフェスト)に「教員が子どもと向き合う時間を確保するため、教員を増員する」と明記した。定数増はその方針を反映したもののようだ。教育現場にとっては朗報といえる。

 社会環境が複雑化し、子どもたちの生活状況は大きく変わったといわれる。こうした変化に対応することは当然であるが、教育には安定し継続する力も求められる。そのためには心身ともにゆとりがあり、自らの力量を高めることができる人材が教育現場に必要だ。

 政府は教職員定数改善を手始めに、教育予算を一層拡充していくことを図るべきである。国の発展の礎である教育の振興を確実に実行するのは、政府の責任である。

 精神疾患で休職した教職員は50代以上と40代で7割以上を占める。多忙な業務によるストレス、教育内容の変化に適応できない、保護者や地域からの要望が多様化している−などが背景にあると文科省はみる。

 先生同士の会話が減って学校の職員室は、パソコン画面にくぎ付けになっている姿が目立つとか。子どもとゆっくり向き合って話す時間も、心の余裕もないのだろう。

 小学校に入学したばかりの1年生が集団生活になじめないで、教室で騒いだり歩き回る。中学進学直後には不登校やいじめが増えるといわれる。いわゆる「小1プロブレム」や「中1ギャップ」だ。

 授業数や指導内容が増える新学習指導要領の実施に向けて文科省は、小中学校1学級当たりの児童生徒数の上限を40人としてきた現行の国の学級編成標準を引き下げる意向のようだ。少人数学級推進は、時代の要請でもあろう。

 一方、学校では「子どもと先生の距離」が遠くなっていないか。先生がお互いに孤立してはいないだろうか。そうした現実があれば解消しなければならない。

 問題を「一人で抱え込むな」と言うだけでは、済むことでない。管理職と一般教員が連携し、先生を育てる実効性ある仕組みを考えて、つくらなければならない。肝要なのは「人の力」「現場の力」の結集だ。

 かつて家庭、学校、地域が子どもを育てる教育基盤だった。地域や家庭の教育機能が低下するなかで、学校の役割は依然として大きいのである。


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