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通常国会開幕 「疑惑」「予算」論戦尽くせ '10/1/19

 政権交代してから初の通常国会が開幕した。鳩山内閣が編成した予算案が初めてまな板に載せられる。新しい時代にふさわしい国会運営や、与野党による真剣な政策論戦を期待したい。

 政府、与党は1月中に補正予算の、年度内に2010年度予算の成立を目指す。だが冒頭から波乱含みである。国会が始まる直前、小沢一郎民主党幹事長の政治資金をめぐり、現職の衆院議員ら側近3人が東京地検特捜部に逮捕されたからだ。

 与党の最高実力者である小沢氏と鳩山由紀夫首相の2人が政治資金の問題を抱える異常事態である。「政治とカネ」が論戦の焦点になるのは避けられない。

 小沢氏は、資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる問題で「積み立ててきた個人資金で、何ら不正なお金は使っていない」と主張。検察の捜査手法を批判し、全面対決の様相である。

 鳩山首相も、小沢氏に「どうぞ戦ってください」と言い、「臆(おく)することなく身の潔白を証明し、職務を遂行するよう要請」した。行政府の長が検察批判とも受け取られかねない発言をしたのはあまりに不見識だ。

 自民党は小沢氏や関係者の参考人招致や集中審議を要求する方針である。与党は応じない構えのようだが、事実関係の解明には関係者の国会招致も必要だ。これだけ疑惑を抱かれたのだから、国会の場で説明を尽くすのは当然の義務である。

 政治とカネの問題に終止符を打つ作業も忘れてはならない。公正で透明な政治を実現するため、直ちに政治資金の抜本的な改革に取り組む必要があろう。

 心配なのは、疑惑解明をめぐる国会の混乱で喫緊の課題である経済対策が遅れてしまうことだ。日本の景気は「二番底」が懸念されているだけに、国民生活へ影響を及ぼしかねない。

 菅直人財務相はきのうの財政演説で「雇用情勢の悪化やデフレなどのリスクが存在し、基盤は依然として脆弱(ぜいじゃく)だ」と厳しい認識を示した。その上で雇用調整助成金の支給要件の緩和や、家電エコポイント制度の改善など環境対策を強調。補正予算の「一刻も早い成立」を要請した。

 10年度予算案は、財源不足もあって民主党マニフェスト(政権公約)の修正も余儀なくされている。経済成長戦略と財政規律の維持をどう調整していくのか。経済政策について、突っ込んだ議論を展開してほしい。

 国会運営にも注文がある。党首討論が政権発足以来、一度も開かれていない。指導者である党首の資質、能力が政党選択の重要な要素になる。与野党トップは直接対決を数多く重ねてもらいたい。

 国民の政治意識は、政権交代を機に少しずつ変化した。政策立案能力や実行力で政党を評価しようとしている。国会終了時には参院選が控えている。選挙目当ての不毛な駆け引きをしていては、政治が国民から見放される。




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