社説

日航破綻/注視したい再生の道のり

 戦後経済と軌を一にして世界に翼を広げたわが国を代表する航空会社が、約60年に及ぶ歴史にいったん幕を下ろした。
 日本航空はきのう、東京地裁に会社更生法の適用を申請した。この経営破綻(はたん)手続きを受け、官民出資の企業再生支援機構が支援を決定。債務を処理する法的整理の枠組みと、事実上の政府管理の下で立て直しが図られる。

 半官半民時代の「親方日の丸」意識から抜け出せず高コストの経営体質を改められなかった。採算が取れない地方空港就航などをめぐる政官との癒着も経営悪化の背景にある。過去と決別することが再生の第一歩であることをまずは確認したい。
 「空の足」として公共性が高い。国内で競争が必要だ。そうした理由で政府支援による再建が決まった。だが、機構が3000億円を出資するのをはじめ、今回の経営危機・破綻で投じられる公的資金は資金繰りのための融資を加え1兆円を超す。

 仮に再建に失敗すれば、この巨額の出・融資は回収できずに国民負担となる。裁判所の関与で公平で透明な再建(更生)計画づくりが進められるにしても、政府・機構は節目ごとに説明する責任がある。われわれ国民も、その道のりに厳しい目を注いでいかなければならない。
 破綻は再生のためとはいえ、事業会社としては過去最大規模の「倒産」である。取引先は国内だけでも1万3000社を超え海外30カ国以上にも及ぶ。

 混乱を防ぐため、政府が国内外に向け日航再建の全面支援声明を出したのは当然だ。運航ストップといった不測の事態が起きれば、再建の行方にも暗雲が立ち込めかねない。信用不安が広がらないよう資金繰りや取引先保護などに万全を期したい。
 機構は3年で再生を目指すという。ただ、機構による計画案はぜい肉をそぎ落とすスリム化策が目立つ。110社ある子会社をほぼ半減、売上高は3割減、グループ全体の3割に当たる1万5700人の人員削減などと、現経営規模の7割程度に減量化するものだ。

 この過程で、削ってならないのは安全運航に資するコストであり、心配なのは社員の士気の低下だ。経費と人を削り給与水準も引き下げるのは、公的資金が入るのだから仕方がない。だが、そのことが航空会社の生命線である安全を脅かすことになっては元も子もない。
 安全確保のためにも、リストラの先に展望が見いだせる新生日航の将来像が要る。路線廃止の不安を抱える地方にとっても、国民の「空の足」として、どう生まれ変わるのかは大きな関心事だ。夏に地裁で予定される再建計画確定までに、その姿を描き出してもらいたい。

 今回の危機の引き金となった世界不況は、なお深刻な状況にある。減った利用客をどう回復するのか。削減する社員の再就職をどう進めるのか。経済がより厳しい中での再出発である。
 最高経営責任者に就任する稲盛和夫京セラ名誉会長ら新経営陣に託される道は険しい。そのかじ取りからも目が離せない。

2010年01月20日水曜日

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