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社説:国会代表質問 首相が打開に動かねば

 通常国会は衆院本会議で各党による代表質問が行われ、与野党論戦の火ぶたが切られた。野党側は鳩山由紀夫首相の偽装献金事件や民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体による土地取得をめぐる事件など「政治とカネ」の問題をそろって取り上げ、首相は守勢の答弁を強いられた。

 土地取得問題に関し首相は小沢氏の「潔白の主張」を信じ、続投を支持する考えを改めて示した。ならばなおのこと、小沢氏や党による国民への説明を主導し政治不信を払しょくすべきだが、そうした決意は答弁から感じられなかった。事態打開への自覚を疑わざるを得ない。

 首相にとって、忸怩(じくじ)たる思いの初日の論戦だったに違いない。政権交代後、初の本予算編成を経た政策論争の場となるはずが、自身と党の要の小沢氏を巻き込んだ「政治とカネ」に多くの答弁は費やされた。

 しかも、局面を自ら転換する意気込みが残念ながら首相からは感じられなかった。自身の実母からの献金の偽装事件について決着済みと強調したが、資金の使途の公表については言葉を濁した。

 小沢氏の団体の政治資金規正法違反事件に関しては、事態をどう認識しているのかという疑念すら、これまでの発言から抱いてしまう。首相は小沢氏の続投を支持した際、「戦ってください」と検察批判と取られかねない発言をした。さすがにこの日は「政治の変革に向け共に戦う」意味と説明、「検察の捜査が公正に行われることを信じたい」と述べ、捜査当局への指揮権発動も否定した。だが、捜査批判との見方が出る言動自体、行政の長として不注意だ。

 自民党の大島理森幹事長が質問で求めた国会での事実関係の解明や民主党の独自調査についても、捜査中であることなどを理由に答弁では踏み込まずじまいだった。小沢氏が説明することについても事実上、自主判断に委ねた。党代表がこれでは、自浄能力発揮を求める声が党内から起きにくかろう。

 今回の捜査を小沢氏らは批判している。検察当局にも一定の説明責任が課せられることは事実だ。だが、国民の視線の厳しさを十分に民主党は自覚すべきだ。各種世論調査で約7割の人が小沢氏は幹事長を辞職すべきだ、と答えている。首相が小沢氏の続投を支持し「一蓮托生(いちれんたくしょう)」となった以上、国民への説明を主導する責任があるはずだ。

 一方で自民党も追及一色では、2大政党として責任に欠ける。国会での集中審議や小沢氏の参考人招致要求をめぐり、審議拒否などの戦術は用いるべきでない。政治資金規正法改正問題など自らの姿勢が問われる課題からも逃げてはならない。

毎日新聞 2010年1月20日 東京朝刊

 

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