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社説:通常国会開会 民主の対応は筋違いだ

 これほど厳しい状況の下で与野党論戦を迎える覚悟が鳩山由紀夫首相、そして民主党全体にあったのだろうか。政権交代後、初の通常国会が18日召集された。

 小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体による土地購入を巡り元秘書らが逮捕されたことに対し、小沢氏が東京地検特捜部と全面対決する姿勢を示し、首相も早々に幹事長続投を支持した中で始まった国会だ。首相本人の偽装献金問題も併せ、「政治とカネ」が大きな焦点になるのは避けられない。

 国民には不幸な状況だというほかない。本来、この国会は鳩山政権が初めて編成した予算案などの審議を通じて政権交代で何がどう変わったのかを確認する重要な場だ。税金の無駄遣いは解消されたか。マニフェストの一部を早くも変更したのは許されるのか。今の経済対策で本当に景気は大丈夫か。沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題など外交・安保の課題も山積している。

 こうしたテーマがなおざりになっていいはずはない。だが、いかなる政策論より前に大切なのは政治に対する信頼だ。その点、今の民主党の対応はまるで理解できない。

 小沢氏はやましいことはないと断言している。ならば民主党は、自民党などが求めている小沢氏の参考人招致にとどまらず、偽証すれば訴追される国会の証人喚問に進んで応じ、その場で小沢氏が堂々と疑惑を晴らせばいいではないか。小沢氏のこれまでの説明ではまったく不十分で、説明を欠いたままの幹事長続投は認められないと再度指摘しておく。民主党が早期の予算成立を主張するのなら、なおさら、早くこの問題にけじめをつけるべきだ。

 民主党は特捜部が報道機関に捜査情報をリーク、漏えいした疑いがあるとして調査チームを作り、報道の情報源も調べるという。捜査に厳正、公平性が必要なのは言うまでもない。しかし、仮に今後の捜査や報道に圧力をかける狙いが、調査チームにあるとすればそれは筋違いだ。

 一方、自民党も小沢氏と首相の資金問題を徹底追及するというが、予算案審議を遅らせて抵抗するというのであれば、これまで与党時代に批判していた野党の戦術と同じだ。新しい野党像を示してほしい。

 今の政権が安定するのか、再度衆参がねじれて政治は混迷するのかが焦点となる夏の参院選に直結する国会でもある。まず、与野党ともに昨年の総選挙で有権者の多くがなぜ、政権交代に期待したのかを今一度、確認してもらいたい。このままでは「やはり政治は変わらない」と国民の間に不信感ばかりが募るだけだ。それを恐れる。

毎日新聞 2010年1月19日 東京朝刊

 

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