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日航再建 信用不安回避に万全を期せ 2010年01月20日

 日本航空は19日、東京地裁に会社更生法の適用を申請。官民共同出資の企業再生支援機構が支援を決定した。これにより、日航は事実上国の管理下で再出発し、3年間で再建を図る。再建に当たっては信用不安の回避に万全を期し、迅速かつ着実に進めてもらいたい。

 巨大企業の再建をどう進めるか。当初金融機関などとの協議により、借金返済の免除や猶予をしてもらう「私的整理」を念頭に置いていた政府の方針は迷走。結局、裁判所の管理下で、法律に基づき資産処分や債務返済などを行う「法的整理」に落ち着いた。

 私的整理より厳しい再建策になろうが、この際「親方日の丸」的な体質から脱却し、過去のしがらみを断ち切る好機と前向きに考えるべきだ。その上で、どんな航空会社に再生させるのか、早急に将来像を描いてほしい。そのことが無用な混乱を避け、利用客をはじめ国内外の信頼を得ることにつながる。

 再建案では3年間でグループ従業員の3割強に当たる約1万5700人を削減し、2010年度中に110社ある子会社を半減させる。路線の運休・減便、機材の小型化も進める。支援機構から3千億円の出資を受ける一方、金融機関には3500億円規模の債権放棄を要請、8600億円超の債務超過を解消する。11年度の黒字転換が目標だ。

 懸案だった企業年金の改定は現役社員、退職者ともに3分の2以上の同意を得て大幅な減額案を採用。特に退職者には不満もあろうが、全社一丸となることで経営危機を乗り越えられるのではないか。

 燃油や部品など一般商取引債権については支援機構が保護を表明した。日航グループの国内取引先は延べ1万3千社余に上り、直接取引企業だけでも3千社近い。動揺が広がらないよう努めてほしい。利用者のマイレージや株主優待券も保護されるが、これらきめ細かな情報発信が利用者などに広がりつつある不安の払拭[ふっしょく]に結び付く。

 一方、支援機構が出資金とは別に4千億円、日本政策投資銀行が2千億円、計6千億円の融資枠を設定することも固まった。商取引などで現金決済を迫られ、急激に現金が流出した場合に備える。

 西松遥社長ら同社取締役は更生法適用申請に合わせて退任。京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が新しい会長兼最高経営責任者(CEO)に就任し、無給で指揮を執る。京セラをベンチャー企業から日本有数の電子部品メーカーに育て上げた実績と手腕に期待したい。

 更生計画案は7月に提出、8月に裁判所の認可を受ける方針。計画の実効性が最大の焦点となろう。

 政府の全面支援を受けて再建を目指す日航に対し、ライバルの全日本空輸は企業間での公平、公正な競争環境が確保されるよう訴えている。業績が悪いのは全日空も同じだからだ。

 なぜ巨額の公的資金を投じて日航再建を目指すのか。「国民の足」であり、物流といった経済活動の動脈であることなどが理由に挙げられようが、政府には国民が納得できる、より丁寧な説明を心掛けてほしい。




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