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通常国会開幕 「政治不信」に応えてからだ 2010年01月18日

 通常国会が18日開幕する。本来は今夏の参院選に向け、与党の政権担当能力や野党の態勢立て直しが問われる国会となるべきだが、直前に小沢一郎民主党幹事長の政治資金をめぐって現職の衆院議員を含む元秘書らが逮捕された。異常な事態の中で開かれる国会論戦の行方に、危惧[きぐ]の念を抱かざるを得ない。

 小沢氏は16日の民主党大会で東京地検特捜部の捜査を「到底容認できない」と厳しく批判。幹事長職を続投した上で検察当局と対決していく考えを表明した。鳩山由紀夫首相も「どうぞ戦ってください」と、行政トップとしては異例の言い方で小沢氏を擁護した。政権ぐるみで検察と対峙[たいじ]するかのような姿勢である。

 自民党など野党は、小沢氏はもちろん、鳩山首相の責任も厳しく追及する構えだ。国会は冒頭から与野党激突の展開になる情勢だが、経済対策や予算、沖縄の米軍普天間飛行場移設問題など議論すべき課題は山積している。いつになく重要なはずの今国会の貴重な時間が、「政治とカネ」の問題で費やされようとしている。情けないのひと言に尽きる。

 鳩山首相にも“故人献金”問題があった。党の代表と幹事長がともに自らの政治資金問題を問われたにもかかわらず、十分に説明してこなかったことがこのような事態を招いたと言える。両氏の責任は重い。

 「検察との対決」を言うのは政治家の勝手だが、それを傍観するしかない国民への視線を忘れてはいないだろうか。民主党が掲げた「変革」への期待があってこその政権交代だった。どの党が政権を取っても、相変わらず「カネ」の問題では政治不信は増すばかりだ。

 鳩山首相にも小沢氏にも、通常国会では国民が納得するまで説明を尽くし、本来取り組むべき課題を議論できる状況を早期につくる責務がある。閣僚でない小沢氏だが、要請があれば参考人招致に応じるなどして疑問に答えるべきではないか。

 国家の重要課題を遠景に追いやってしまいかねない「政治とカネ」の問題だが、喫緊のテーマについてはきちんと国会で議論してもらわなければ困る。まずは経済対策である。冒頭から2009年度第2次補正予算案、続いて10年度予算案の審議に入る。鳩山首相は早期成立を目指しているが、これも小沢氏の問題次第となるだろうか。世界経済が回復基調にある中で、日本だけが乗り遅れる事態は避けなければならない。

 昨年末に発表した「成長戦略」の基本方針については、6月に工程表を盛り込んだ具体案を決めることになっている。経済政策は鳩山政権の“弱点”のようにも指摘される。国会論戦の中から、鳩山政権版「成長戦略」を提示してもらいたい。

 もう一つの大きな課題は外交政策の立て直しだ。その最優先事項は米軍普天間飛行場の移設先を公約通り5月に決着させること。その上で、揺らぎが見える日米関係を良好なものにしたい。同時に、米中2大国の間で日本の立ち位置はどうあるべきか、外交戦略の構築を急ぐべきだ。

 いずれにせよ、夏の参院選に直結する通常国会である。与野党には真摯[しんし]な論戦を期待する。国民の厳しい審判が待っている。




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