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社説

阪神大震災15年 継続的な被災者支援が必要 2010年01月17日

 6434人もの命が奪われた阪神大震災から17日で15年。街の復興・整備は進んだものの、被災者の生活や心の支援など今なお多くの課題が残っており、行政や地域による継続的な取り組みが求められる。

 日本ケミカルシューズ工業組合によると、神戸市長田区に集中する靴製造加工関連企業約1700社の8割が震災によって壊滅的な被害を受けた。その後の不況がさらに追い打ちをかけ、現在は700~800社と震災前の半数以下に減った。

 神戸市では、生活保護を受ける人の割合が震災前に比べ高くなっている。中でも中小零細企業が集中し、火災の被害が大きかった長田区と兵庫区が突出している。経済情勢の悪化から、生活保護受給者の割合の上昇は全国的な傾向とはいえ、震災の傷跡は深刻だ。

 復興対策が市街地再開発や道路、港湾の修理などに集中し、被災者の生活支援に手が回らず、地域格差を生んでいると言えるのではないか。学識者から、被災者個々の生活を守る視点がなく開発が優先された結果だとの批判が出ているが、行政は重く受け止めるべきだろう。

 公営の被災者向け復興住宅は抽選による入居のため、多くの人が地域の知人らと離れ離れになり、環境になじめず閉じこもりがちになる高齢者が少なくないという。一人暮らしの入居者が誰にもみとられず死亡した「孤独死」は、昨年1年間で62人に上る。うち58人が60代以上。2000年以降、孤独死は計630人になった。昨年11月末現在、復興住宅の高齢化率は48%で、一般の県営住宅の2倍という。孤立化する高齢者対策が急務で、見回り、声掛けだけでなく、生きがいにも目を向ける必要がある。

 共同通信が昨年11月下旬、神戸市の被災者100人に実施したアンケートによると、街の活気や経済、雇用環境が元通りになっていないことなどを理由に、29%の人が「復興していない」と感じている。自分の生活についても22%が「復興していない」と回答。「精神的なショックが続いている」とした人は35%に上った。コミュニティーが破壊され、地域の産業も衰退。震災が今もなお被災者の生活に影を落としている実態が浮かぶ。

 こうした中、震災によるけがなどが原因で身体障害者になった「震災障害者」をめぐり、行政が動き始めた。関係者の働き掛けが実り、神戸市が昨年10月、身体障害者手帳を発行した約7万人を対象に診断書の記載などを初めて調査。震災障害者が市内に少なくとも183人いることが分かった。兵庫県と神戸市はそれぞれ来年度にも実態調査に乗り出す方針だ。

 「地震列島」の日本では、被害の経験や教訓を受け継ぐことが欠かせない。だが、被災者アンケートで、58%の人が「震災の体験が風化している」と回答した。震災後も中越地震や能登半島地震など大地震が続いている。もし、自分が暮らす地域が大地震に見舞われたら-。被害を少しでも軽減するために、住民一人一人が備えておくべきことも多いはずだ。きょう17日を、防災意識を高めるきっかけとしたい。




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