小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体、陸山会の土地購入問題をめぐる捜査が新たな局面に入った。
東京地検特捜部は、元事務担当で小沢氏の私設秘書だった石川知裕衆院議員=北海道11区=らの政治資金規正法違反容疑(虚偽記載)に絡み、陸山会や小沢氏の個人事務所など関係先を一斉に家宅捜索。15日夜、同法違反容疑で石川議員と元私設秘書を逮捕した。
問題となっているのは陸山会が2004年10月に都内で購入した土地の資金。石川氏は「小沢氏からの貸付金4億円を充てた」と説明し、この4億円の収入を政治資金収支報告書に記載しなかったことを認めた。
ただ、資金が複数口座を経由して陸山会の特定口座に集約されるなど不可解な点もあり、特捜部は小沢氏に参考人聴取を要請したが、小沢氏は応じていない。このことが、当初は通常国会前に石川氏らを在宅のまま刑事処分する方向で検討していた検察の捜査方針転換の一因になったとみられる。
さらに中堅ゼネコンの元幹部が、土地購入と同時期に、岩手県で建設中の胆沢[いざわ]ダム工事の下請け参入を目的に石川氏に5千万円を渡したと供述していることも明らかになった。特捜部はダム本体工事を受注した大手の鹿島も捜索しており、これらゼネコンからの献金が代金の原資になった可能性を調べているもようだ。
小沢氏は家宅捜索の前日の会見で「計算上のミスがあったかもしれないが、意図的に法律に反するような行為はしていないと信じている」と述べたが、それ以上は口を閉ざした。政権党を率いる立場を自覚するならば、拠出したとされる資金の出所や流れなど、疑念を持たれている点について検察、国民にきちんと説明すべきではないか。
民主党内の沈黙も残念だ。小沢氏を恐れてか、説明を求める声さえほとんど聞かれない。こんなことで政治の透明化を主張してきた政党と言えるのか。本人から事情を聴く意思も示さない鳩山由紀夫首相の姿勢も問題と言うしかない。
このまま通常国会が始まれば、政治とカネをめぐる与野党の対立で混乱は必至だ。経済対策などを盛り込んだ補正予算案、新年度予算案の審議が遅れれば、日本経済、国民の暮らしに多大な悪影響が出かねない。
小沢氏と鳩山政権は疑念に対する丁寧な説明をし、正常な国会審議ができるよう努める責任がある。国民の期待を裏切らないでもらいたい。
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