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社説

給油活動撤収 本格的な復興策展開に期待 2010年01月14日

 インド洋で海上自衛隊が行ってきた給油支援活動が15日、打ち切られ、派遣されていた海自艦船は撤収する。政府の撤収方針で、新テロ対策特別措置法が期限切れを迎えるためで、米中枢同時テロを受け2001年末に始まった同活動は8年余りで幕を閉じる。

 政府は代替策として、これまでの約20億ドルを大きく上回る総額約50億ドルに上るアフガニスタン支援策を表明している。(1)農業・農村整備(2)学校建設、教員養成(3)タリバン元兵士らへの職業訓練(4)警察の訓練、給与支援、などが柱。今後の日本の貢献は、民生分野を中心にアフガン本土に重点に置いたものとなる。

 給油活動は「テロとの戦い」の一環として、テロリストや武器の移動、資金源の麻薬の輸送を阻止する米軍主導の多国籍軍艦船を支援。国際的評価も高く、撤収については当初、米国などから懸念する声も上がった。だが、オバマ米大統領が昨年末に示したアフガン新戦略では、米軍増派とともに、来年7月からの撤退開始や民生支援強化という「出口戦略」も表明。日本の支援策転換は、図らずも米国とも協調できる、時宜にかなったものとなった。

 しかし、人的被害の可能性が低かった給油支援に比べ、現地での民生支援の前には、治安悪化という大きな難題が横たわっている。

 長年、現地で支援活動を続けてきた非政府組織(NGO)ペシャワール会は、スタッフの伊藤和也さん殺害事件を乗り越え昨年、大規模用水路を完成させた。だが、治安のますますの悪化で、現地からの一時撤退を検討するまでの状況となっている。また、政府の農業支援の中核として位置付けられている国際協力機構(JICA)の現地派遣員も「武装警備員に守られながらの活動を強いられている状況」(JICA本部広報室)という。

 アフガンの民生支援の実効性を挙げるためには、人員の派遣が不可欠だろう。カルザイ政権は根深い汚職構造が指摘されており、人的監視がない資金・物資援助では、本当に支援が必要な人たちに届かない可能性がある。それどころか、カルザイ政権の腐敗体質をエスカレートさせる結果につながりかねない。そうなれば、こうした状況を批判している反政府武装勢力タリバンの活動を活発化させ、さらに治安が悪化するという悪循環に陥る。

 ただ、タリバンについては昨年末、国際テロ組織アルカイダの活動を排除する用意があることを米政府に伝えていたことが判明。カルザイ政権が公約しているタリバン穏健派と和解し政権に取り込むとの方針に光明が見え始めた。日本はこうした政権安定化のプロセスにも積極的に関与すべきだろう。

 鳩山由紀夫首相は、給油活動撤収を表明した昨年秋の国会答弁で「武力に頼るだけではテロはなくならない。テロの根源となる貧困や宗教的なものを考えながら、アフガンの平和と経済再生に貢献することが日本の責務」と述べている。今回の支援策転換は、武力に頼らぬ日本の国際貢献の正念場となろう。独自性を発揮した本格的なアフガン復興策展開につながることを期待したい。




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