くまにちコム:熊本のニュース速報なら熊本日日新聞

テキスト版サイトマップ


くまにちコム トップ > 社説・射程・新生面 > 社説 市町村合併 自治の“かたち”広く模索を


社説

市町村合併 自治の“かたち”広く模索を 2010年01月13日

 「平成の大合併」を進めた市町村合併特例法がことし3月末に期限切れを迎える。これに伴い、政府が次期通常国会中の成立を目指す特例法改正案の概要が明らかになった。

 改正案では、合併を促す“アメ”として、町村が市に移行する要件を本来の5万人から3万人に緩和した特例などが打ち切られる見通し。合併推進に向けた国の基本指針や、都道府県知事による合併協議会の設置勧告、合併構想の策定も廃止されるなど、国と都道府県の積極的な関与がなくなる。国が強力に推し進めた「平成の大合併」もこれにより、一つの区切りを迎えると言えよう。

 1999年3月末時点で3232だった全国の市町村は、ことし3月末で1730(786市、757町、187村)にほぼ半減した。94市町村だった熊本県も、2003年4月のあさぎり町誕生を皮切りに再編が進展。ことし3月23日の熊本市と植木、城南両町との合併後は、14市、23町、8村の45になる。

 ただし、市町村再編の目的として掲げられた「地方分権の受け皿」としての機能強化が十分に進んだかどうか、現時点では一概に判断できまい。

 国から地方への権限、財源の移譲は、中央省庁の抵抗もあって一向に進んでいない。半面、全国にはなお人口1万人未満の小規模自治体が約480、県内にも8町7村があり、将来的な財政基盤や行政サービスの維持に不安を残している。

 昨年3月、熊本日日新聞社が47市町村の首長に対し行ったアンケートでは、合併17市町村の大半が、合併を肯定的に受け止める一方、合併していない27市町村の5割が評価を保留した。

 合併自治体も、手放しで評価しているわけではない。行政コストの削減が大きく進んだとのメリットがある一方、合併以前は経済的にも精神的にも地域の拠点だった役所が「遠くなった」などの懸念も住民の間に生じているという。

 03~04年度の「三位一体の改革」で、地方交付税の総額が大きく削減されたことも、議論を複雑にしてしまった。合併により、国の手厚い財政支援を期待していたのに、「こんなはずではなかった」という声があるのは理解できる。ただし、地方分権の推進を旗印にした「平成の大合併」の背景に、国と地方の深刻な財政危機があったことは、今更言うまでもないだろう。

 政府は次の改正案で、合併特例法の目的を現行の「合併の推進」から「合併の円滑化」に改める方針。各自治体の自主性に任せる一方、地方交付税の上乗せ配分など、一部の優遇措置は維持する。一方で、自治体相互の広域連携を促す仕組みを地方自治法改正案に盛り込むなど、未合併の小規模自治体に対する支援策も検討する考えだ。

 この点は、鳩山由紀夫政権の「地域主権」に基づく新たな取り組みとして評価できる。広域合併を通じた規模拡大だけが、市町村存続のための唯一の道だとも思えないからだ。本来の地方自治とは、住民相互が汗と知恵を提供し合うことで、地域の実情に柔軟に対応した“かたち”を模索すべきものだと考えたい。




社説 記事一覧

 

個人情報保護方針著作物の利用についてお問い合わせ

↑このページの先頭へもどる


無断転載は禁じます。「くまにち.コム」に掲載の記事、写真等の著作権は熊本日日新聞社または、各情報提供者にあります。

Copyright(C) 熊本日日新聞社,All Rights Reserved.