岡田克也外相とヒラリー・クリントン米国務長官が日本時間の13日、ハワイで会談する。今年は日米安全保障条約改定から50周年。「日米同盟の深化」に向けた“キックオフ”との位置付けだ。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題の行く末が見通せない中、果たして議論を深められるのか疑問も残る。だが、日米間の課題は普天間問題だけにとどまらないことも確かだ。率直に意見を述べ合い、同盟の未来像を共有するための一歩としたい。
同盟協議は昨年11月の日米首脳会談で実施を確認していた。しかし、普天間問題で決着を見送った日本側に対し、移設先は日米が2006年に合意したキャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)の現行計画以外にない、との姿勢を崩していない米側が反発、棚上げされてきた。
米側が方針を転換し外相会談に応じた背景には、米国にとって「アジア外交の礎石」となる日米同盟を、これ以上危うくするわけにはいかないとの判断があるようだ。
ただ、日本と完全な対立は避けたいとするオバマ米政権と、「対等な日米関係」を目指す鳩山政権の思惑は必ずしも同じでない。
日本政府は会談で、現行計画を「有力案の一つ」との認識を伝える方向で検討中とされるが、鳩山由紀夫首相は「辺野古以外」に力点を置いた発言を繰り返してきた。日本政府の真意がどこにあるのか、米政府の困惑と反発も無理はない。
半面、米外交の半世紀を振り返れば、泥沼化したベトナム戦争やイラク戦争に踏み切った際の“名分”など、重大な誤りが指摘されていることも事実である。鳩山首相が掲げる「対等な日米関係」を築き、米政権にきちんとものを言うのは結構である。
しかし、それには条件がある。日本政府として一致した見解、政策を主張すること、理想を持ちながらも現実を踏まえ明確な未来図を描き出すこと、さらに腹を据えて主張し本音で議論することだ。それなくして「対等」と繰り返しても、米国に対する説得力は持ち得ない。
岡田外相は会談を前に、普天間問題に関し「特に新しいことがあるわけではない」と説明。移設先を模索している日本の現状を伝える考えだ。一方で普天間や米軍嘉手納基地(同県嘉手納町など)の騒音問題など沖縄の基地負担軽減策について意見交換したいという。
鳩山首相は米側が強い難色を示す日米地位協定も提起したい意向とされる。米国防総省には協議入りへの反発もあり、議論進展の見通しは立っていないようだが、日米が普天間問題に続く新たな難題を抱え込むことにならないよう、日本政府として意思の統一を図ってもらいたい。このほか、北朝鮮やイランの核問題、中国やミャンマーとの外交政策など幅広いテーマで意見交換が予定されている。
戦後、一貫して続いた米国だけを意識した外交政策。それを変え、同盟を深化させたいとする首相の思いも理解できる。ただし、それには首相自身の強いリーダーシップと国民への丁寧な説明が不可欠である。
無断転載は禁じます。「くまにち.コム」に掲載の記事、写真等の著作権は熊本日日新聞社または、各情報提供者にあります。
Copyright(C) 熊本日日新聞社,All Rights Reserved.