「産業革命以降の気温上昇を2度以内に抑える」。しかし、その目標達成のため、どの国が何をするか全く決まっていない・・・。
昨年末の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)で決まったコペンハーゲン合意が今年、あいまいなまま動き出す。温暖化を食い止めるにはあまりにも不十分だ。
しかし、米国や中国を含め、二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの主要排出国が参加したことにいちるの望みもある。排出削減へ向け鳩山政権の動きも今春から始まる。低炭素革命を目指す重要な年にしたい。
流れ出す南極や北極の氷山、海面上昇被害が深刻な島しょ国、洪水や干ばつも各地で起き、生態系への影響も懸念されている。温暖化対策は一刻の猶予も許されない。
1997年、京都で開かれたCOP3。先進国に温室効果ガスの排出削減目標を課す京都議定書を採択、初めて世界が協調して温暖化問題に取り組むことを決めた。
しかし、米国は批准せず、経済成長が著しい新興国にも削減義務はなかった。義務を負う日本、欧州など先進国の排出量は全体の3割。一方で、中国は世界一の排出国になり、2位の米国と合わせると排出量の41%を占めるまでになった。世界のCO2排出は増え続け、京都議定書は2012年で終わる。そこで、13年以降の国際的な削減の枠組みづくりを目指したのがCOP15だった。
だが、新たな枠組みづくりは開催前に先送りが決定し、法的拘束力のない政治的合意づくりも最終的に失敗した。何も決まらない最悪事態は避けようと、米国や中国、欧州、日本など二十数カ国が、辛うじて取り繕ったのがコペンハーゲン合意だ。合意は全体会では支持が得られず、「留意する」という異例の決議にとどまった。
「高い削減目標は経済成長にマイナス」「温暖化対策は先進国が負うべきだ」。排出削減を互いに押しつけ合った先進国と新興国、途上国の対立は、予想以上に深刻だった。
ただし、各国の複雑な経済事情、富裕国と貧困国の差が横たわる中、米中を含む主要排出国が合意したことは一定の評価もできよう。今後はまず今月31日までに、先進国は20年までの削減目標を、中国など新興国は削減行動を提出することになっている。これを土台に、公平かつ実効性ある枠組みへとどう発展させるかが課題だ。
日本は昨年9月に鳩山由紀夫首相が表明した通り、すべての主要排出国が参加することを条件に90年比25%削減と、世界でも最も高い目標を提出する方針だ。
鳩山政権は今春、温暖化対策基本法案を国会に提出し、25%削減への具体的な道筋を示す工程表も発表する。排出削減を誘導する温暖化対策税(環境税)導入や排出量取引の仕組み構築も急ぐべきだ。
取り組みを背景に、世界に対してより積極的な温暖化対策を呼び掛ける必要もある。同時に、低炭素社会へ技術革新を促し、途上国への支援や技術移転も進め、世界の排出削減に貢献するのも役割だろう。
混迷を乗り越え、世界が一丸となって温暖化対策を探る時だ。
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