民主党の小沢一郎幹事長の資金管理団体「陸山会」が２００４年に土地を購入した際の資金の流れを調べている東京地検特捜部は、小沢氏本人から任意で事情を聴く方針を固めた。小沢氏は応じる意向とみられ、捜査はヤマ場を迎える。

　当時の陸山会の事務担当者で小沢氏の秘書だった石川知裕衆院議員らの聴取から、土地購入の指示や代金に充てた４億円の資金調達で小沢氏の関与が明らかになった。

　特捜部はこの購入代金などを収支報告書に記載しなかった政治資金規正法違反の罪で石川氏を在宅起訴する方針。会計責任者だった公設第１秘書大久保隆規被告＝公判中＝も関与した疑いがあるとして刑事処分する方向で検討している。ただ４億円の資金をめぐっては、複数の政治団体を経由するなど不可解な流れが浮かんでいる。その出所を含め、資金の流れを明確にするためには小沢氏の参考人聴取が不可欠、と検察が判断したのは当然だろう。

　小沢氏はかねて、自らの政治資金について「すべて法にのっとって報告しオープンにしている」と強調している。それならばなぜ今回の件が収支報告書に記載されず、複雑なカネの動きが生じたのか。透明性を主張するのなら、国民に経緯をきちんと説明し疑問に答えてもらいたい。

　問題になっている土地は、陸山会が０４年１０月、約３億４千万円で購入した東京都世田谷区の秘書寮用地。これまでに分かった事実関係を整理すると、小沢氏の指示で大久保氏らが土地を探し、石川氏が経理処理を任された。石川氏は小沢氏から現金４億円を受け取り、複数の政治団体の口座に分散してから陸山会に集め、売り主に送金したとされる。

　小沢氏側は当初「定期預金を担保に金融機関から４億円を借り、購入資金に充てた」と説明していたが、実際には融資を受ける前に支払いを済ませていた。この購入資金が陸山会の０４年の収支報告書に記載されなかったほか、３年後に小沢氏に返済したとみられる４億円の支出なども不記載だった。

　特捜部の聴取に石川氏は、不記載は「単純ミス」「小沢先生は知らなかった」と供述しているというが、国民の多くは納得しまい。

　それにしても、政権与党のトップ２人が相次いで政治資金に絡み疑惑を持たれる姿は尋常ではない。

　小沢氏の資金をめぐっては、西松建設からの巨額献金事件で規正法違反に問われた大久保被告の裁判が始まった。鳩山由紀夫首相の偽装献金問題では昨年末、同じく規正法違反で元秘書２人がそれぞれ在宅、略式で起訴された。

　自民党は１８日に召集される通常国会で小沢氏らの参考人招致を求めながら、これらの政治資金問題を厳しく追及する構えだ。審議が紛糾すれば、早急に実行に移すべき経済対策を盛り込んだ補正予算案や２０１０年度予算案の成立にも支障が出かねない。

　ここは当事者が丁寧に説明責任を果たせるかどうかにかかっている。旧態依然の「政治とカネ」の問題が尾を引いていくようだと、政権交代を選択した国民の政治不信は再び高まることにもなる。