くまにちコム:熊本のニュース速報なら熊本日日新聞

テキスト版サイトマップ


くまにちコム トップ > 社説・射程・新生面 > 社説 分権改革 地域主権の方向定める年に


社説

分権改革 地域主権の方向定める年に 2010年01月08日

 鳩山由紀夫首相は「地域主権国家をつくることは政権の一丁目一番地だ」と言う。その分権改革の論議が今月から本格化する。

 議論を引っ張るのは「地域主権戦略会議」「地方行財政検討会議」「国と地方の協議の場」の3組織。地方分権については、これまで幾つもの会議で議論されてきたが、省庁などの抵抗で目を引くような成果は上がらなかった。看板の掛け替えに終わらないよう「3頭立ての馬車」でしっかり歩を進めてもらいたい。

 まず「地域主権戦略会議」。前政権までは首相と全閣僚による地方分権改革推進本部が改革の方向性を決め、政府の地方分権改革推進委員会が首相に具体案を勧告してきた。戦略会議はこの双方の機能を併せ持つ。首相の直属機関で、メンバーも従来の有識者や地方代表だけでなく、閣僚も入っている。政治主導を強調した布陣だけに、堂々巡りの議論は許されない。

 今月初会合を開く「地方行財政検討会議」は、地方自治法を抜本的に改正して「地方政府基本法(仮称)」の具体案を審議するという。首相の諮問機関としてあった地方制度調査会に代わるものといわれる。

 「国と地方の協議の場」は、国と地方自治体が対等な立場で協議する場との位置づけだ。任意の協議機関は小泉政権時代の2004年から設置されているが、協議結果を確実に国の政策に反映させるため、今回の「協議の場」は法制化されることになっている。

 権限と財源の多くを国が握る現状で、国と地方が対等な関係を築くのは容易ではない。それらを地方へ移譲しなければならない。その協議を進めるには、双方の信頼関係が必要だ。子ども手当の財源の一部を地方に求める政府方針に対し、松沢成文神奈川県知事が事務のボイコットを表明した。このようなやり方が続けば対立が深まるだけだ。「協議の場」を地方が政府に陳情や要望する場に終わらせず、懸案に知恵を出し合う場にしてもらいたい。

 戦略会議は先月の初会合で、原口一博総務相が13年夏までの3年半で政権が取り組む改革スケジュール(工程表)を示した。これを見ると、掛け声通りに「地域主権」が進むのか早くも疑問を感じる。

 国が法令で自治体の仕事を縛る「義務付け」の見直しがその一つだ。地方側が求めた104項目のうち、見直しは36項目だけ。省庁の抵抗の強さがうかがえる。さらに、民主党がマニフェスト(政権公約)で全廃と明記した国直轄事業に対する地方負担金も、維持管理費の負担金は10年度から全廃としたものの、金額が大きい建設費分については「関係府省と検討」という表現にとどまっている。

 昨年、事業仕分けが国民の注目を集めた。その中で気になったのは、省益を必死に守ろうとする副大臣の姿だ。民主党議員でも立場が変わればそうなる。官僚組織の壁は厚い。それを突き崩すのは「3頭立ての馬車」を操る首相の手綱さばきだ。まずは、分権改革委の審議で中途半端に終わった地方税財政や国の出先機関改革に取り組み、地域主権の方向を定める年にしてもらいたい。




社説 記事一覧

 

個人情報保護方針著作物の利用についてお問い合わせ

↑このページの先頭へもどる


無断転載は禁じます。「くまにち.コム」に掲載の記事、写真等の著作権は熊本日日新聞社または、各情報提供者にあります。

Copyright(C) 熊本日日新聞社,All Rights Reserved.