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社説

財務相辞任 予算案審議に万全を期せ 2010年01月07日

 藤井裕久財務相が5日、「体調不良」を理由に辞意を表明した。2009年度第2次補正予算案と10年度予算案を審議する通常国会の召集は18日の予定だ。財務相は予算編成の責任者であり、その重要閣僚の交代による国会運営への影響は必至だ。

 鳩山由紀夫首相は「せっかく予算案という“こども”を産んでいただいたので、育てていただきたいとの思いは当然強くある」と続投への希望をにじませた。しかし藤井氏の辞意は固く6日夜、辞任を了承。後任には菅直人副総理を起用した。菅氏が兼務していた国家戦略担当相は仙谷由人行政刷新担当相が兼務する。

 デフレや円高で景気の「二番底」が懸念されている。経済状況が難しい中、経済運営の要である閣僚の交代は、国民の間に不安心理を生みかねない。予算案審議でちゃんと説明ができるのか。政府は態勢の立て直しを急ぐべきだ。

 後任をめぐっては与党内で菅氏のほか仙谷氏らの名前が挙がっていた。菅氏の起用は小沢一郎民主党幹事長の意向もあったとみられる。

 自民党など野党は予算案をめぐり「ばらまき」や「公約違反」と厳しく追及する構えだ。追及をしのいで国会を乗り切るのは容易ではない。

 藤井氏は予算編成の激務による過労で、昨年12月28日から静養と検査のために入院、公務を休んでいた。予算案審議では野党の追及だけでなく、1日7時間近い長時間の審議となる。同氏は体調が回復しないため、辞意を決めたようだ。

 ただ藤井氏は政権にとって、党内きっての経済・財政通というだけでなく「特別な存在」(首相周辺)だった。首相の知恵袋的な存在で、与党内に人望があり、野党や官僚にもにらみがきく政権の重しだった。

 同氏は昨年の衆院選前、政界を引退する意向を表明した。しかし党代表の首相が強く出馬を要請。財務相起用の際には、藤井氏との関係が悪化して難色を示した小沢幹事長を、首相が押し切った経緯もあった。首相が頼りにしたベテランの辞任が政権に与える打撃は大きかろう。

 予算編成をめぐり政府内で対立があったともいわれる。一方、03年の民主党、旧自由党の合併をめぐる不透明な政治資金処理の問題が辞意の背景にあるとの見方もある。

 ともあれ、政権にとっていま最も重要なことは景気を失速させないことだ。経済や国民生活に影響が出ないよう、首相には強い指導力の発揮を求めたい。




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