くまにちコム:熊本のニュース速報なら熊本日日新聞

テキスト版サイトマップ


くまにちコム トップ > 社説・射程・新生面 > 社説 国際展望 米中2国を軸にした時代に


社説

国際展望 米中2国を軸にした時代に 2010年01月05日

 冷戦体制の崩壊後、米国は一極支配への自信から単独行動主義に走った。しかし、イラクとアフガニスタンの二つの戦争に翻弄[ほんろう]された末に、自国発の金融危機で国際政治・経済の指導力は陰り、それとともに世界の多極化時代が幕開けした。

●発言力増す新興・途上国

 その輪郭が徐々に姿を現したのが昨年だった。金融サミットや気候変動枠組み条約締約国会議などで、米欧日などの主要国(G8)に代わり中国、インド、ブラジルなどの新興国・途上国が加わった20カ国・地域(G20)が発言力を増した。

 G20は金融サミットの定例化で世界経済を協議する新たな枠組みとなった。もはや先進富裕国だけでは経済・エネルギーなど地球規模の問題は解決できない。経済のグローバル化がもたらした先進、新興、途上国といったグループ間の格差拡大に起因する利害の対立と協調が、世界の政治・経済動向の基調を決めていくだろう。

 そしてその中心軸に米中の両国(G2)がなり、多様な多国間協調を通じ影響力を競い合っていくものとみられる。

 ブッシュ前政権の単独行動主義と決別したオバマ米政権は、国連などの国際機構・枠組みや関係国との対話を通して解決策を探る、多国間協調外交へ転換した。

 一方、毎年10%前後の経済成長を続ける中国は、G20のリーダーを目指している。同時にロシア、中央アジア4カ国との上海協力機構(SCO)やインド、ブラジルなどとの新興4カ国(BRICs)首脳会議、東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易圏創設、アフリカ諸国支援などで多国間協調を進め、米国の対抗軸になろうとしている。

●「核のない世界」へ

 今年は、「核のない世界」へ前進できるかどうかが問われる。越年した米ロの第1次戦略兵器削減条約(START1)の後継核軍縮条約が早期に調印できるのか。また4月には核安全保障サミット、5月には核拡散防止条約(NPT)再検討会議と、核軍縮・不拡散をめぐる国際会議が続く。米ロなど核保有5カ国には、率先した軍縮努力を求めたい。

 核不拡散の最優先課題は北朝鮮とイランの核開発阻止だ。昨年後半に米朝対話が始まったが、北朝鮮の6カ国協議復帰の見通しは立っておらず、イランと欧米など6カ国との核交渉も行き詰まっている。国際社会は知恵を絞り、対話での解決策を探るべきだ。

 テロとの戦いでは、米国が3万人の増派と来年7月の米軍撤退開始を発表したアフガン情勢が厳しさを増し、隣国パキスタンの治安も悪化している。米政権にとっては、「オバマの戦争」からの出口戦略を描けるか試練の年である。

 韓国と北朝鮮の南北関係では、韓国の李明博[イミョンバク]大統領が4日の新年演説で常設対話機構の設置を提案した。北朝鮮が1日の新年共同社説で関係改善を呼び掛けたことに呼応したもので、今年は新たな展開がありそうだ。日本政府は、日本人拉致問題の打開に向けて北朝鮮への働き掛けをさらに強めてほしい。

●日米安保条約改定50年

 今年は日米安全保障条約の改定から50年の節目に当たる。

 民主党中心の鳩山連立政権は「対等な日米関係」を標榜[ひょうぼう]し、新たな同盟関係の在り方を模索している。鳩山由紀夫首相は4日の年頭会見で、「日米安保条約改定50年の今年は大きな年で、チャンスとして活用し、日米同盟を重層的に深化させたい」と抱負を語った。

 そうした中、両国が抱える目下の最大の懸案は、在沖縄米軍の普天間飛行場移設問題である。鳩山政権は、膠着[こうちゃく]した事態を国民が納得できる形で早急に解決し、日米政府間の信頼関係を取り戻すよう努力する必要がある。




社説 記事一覧

 

個人情報保護方針著作物の利用についてお問い合わせ

↑このページの先頭へもどる


無断転載は禁じます。「くまにち.コム」に掲載の記事、写真等の著作権は熊本日日新聞社または、各情報提供者にあります。

Copyright(C) 熊本日日新聞社,All Rights Reserved.