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社説

経済展望 内需振興で自律回復の道へ 2010年01月04日

 昨年は世界を同時不況に陥れた金融危機に対して、応急処置に追われた1年だった。各国協調による経済対策で世界経済は持ち直しの過程にあるが、足取りは重いままだ。財政政策には限界があり、一刻も早く景気を自律回復の軌道に乗せたい。2010年世界経済の焦点は、その一点に尽きよう。

●雇用・デフレ対策を

 日本経済も景気対策や輸出の伸びで春先までの最悪期を脱している。だが内需は盛り上がりに欠け、持ち直しのペースは極めて緩やかだ。失業率は5%台に張り付き、今年は6%台に悪化するとの予想もある。デフレ長期化も懸念される。日本経済の本格的な回復には雇用対策とデフレ脱却が必要条件となるだろう。

 まずは主要国経済を注視したい。国際通貨基金(IMF)によると、今年の世界全体の国内総生産(GDP)成長率はプラス3・1%と予測されている。まずまずの数字だが、その成否には経済大国、米国の景気が大きく影響する。米連邦準備制度理事会(FRB)によると、今年の米GDP成長率は2・5~3・5%と見込まれている。09年見通しのマイナス0・4~0・1%からプラスに転じるとの予想だ。

 しかし、これは財政・金融両面の景気刺激策によるもので、景気対策終了後の持続的成長については予断を許さない。特に失業率は10年末が9%台半ば、11年末が8%台半ばと高止まりする見通し。米経済の完全回復には、「5~6年は必要」との見方が支配的になっている。

●中国は9%成長も

 欧州に目を転じれば、EU(欧州連合)の昨年のGDP成長率見通しはマイナス4・1%だったが、今年はプラス0・7%、11年は同1・6%と緩やかな回復に向かうとの予想だ。だが、欧州委員会は「不確実性が高い」と慎重な見方を崩していない。失業率が10、11年とも10%を上回るとみられるためである。

 中国は大規模公共事業を中心にいち早く経済を立て直しつつある。13億人余りの人口を抱える中国はGDP伸び率「8%」を経済成長の目安としているが、09年は4兆元(約54兆円)もの景気対策が効いて8%の達成が濃厚。10年は9%台の成長も可能との見方が出ている。

 外需依存型の日本は、まずは回復に向かう世界経済に歩調を合わせていきたい。政府は今年の実質GDP成長率をプラス1・4%と、3年ぶりのプラス成長を見込んでいる。昨年後半からの緩やかな持ち直しを右肩上がりにしたい1年である。

 確かにやや明るい兆しは見えていた。09年4~6月期の実質GDPは年率換算で2・7%増、7~9月期は1・3%増と、2四半期連続でプラス成長だった。輸出が堅調だったためだが、伸び率が鈍化している点は要注意だ。現状の日本経済は減速局面に入っている可能性が高い。

●苦しさ増す家計

 同じ時期、消費者心理も冷え込んでいる。09年11月の消費者態度指数は前月比1・0ポイント低下の39・5と、11カ月ぶりの悪化だった。冬のボーナスの大幅減や雇用不安が影響している。内需は盛り上がらず、家計は苦しさを増している状況だ。

 10年度政府予算案は、一般会計総額が92兆円と過去最大の規模となった。企業支援より家計支援を重視する姿勢を打ち出している。個々には歓迎すべき施策があろうが、家計支援で消費に火が付くかどうかについては、確かな見通しがない。単にばらまきに終わる可能性があることも指摘しておかねばならない。

 昨年末に政府は20年までの「成長戦略」の基本方針を決めた。実質GDP2%の成長を目指す戦略の、最大の柱は雇用創出である。環境や地域活性化なども重点分野としたが、雇用を生み出す産業構造の転換には企業支援が不可欠だろう。そこまで目配りの効いた政策を打ち出す必要がある。鳩山政権の大きな課題だ。




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