厚労省が医師を敵にまわす時
厚労省が「刑事無罪」が確定した女子医大事件医師への処分を検討しています。
2001年3月の「東京女子医大事件」で業務上過失致死罪に問われたものの、2009年3月の東京高裁判決で無罪が確定した医師、佐藤一樹氏に対し行政処分を行うために「弁明の聴取」を近く実施する予定であることが、このほど明らかになりました。
従来、行政処分は、刑事裁判で罰金刑以上の刑が確定した医師などに限られてきましたが、数重なる医療事故報道にともない行政処分の枠も拡大されてきました。しかし、その処分がどの例に課せられるかは明確でなく、何らかの偶然で厚労省の目にとまったものだけが裁かれるという状況です。
佐藤氏の例は冤罪です。加えて、9年前に起こった事例に対しての聴取は、行政処分の事務を担当している医師資質向上対策室は反対したそうです。にも関わらず、医政局の杉野剛医事課長が強引に押し切ったといいます。これが本当なら職権濫用甚だしいものです。
厚労省は国民の健康、医療問題を扱う唯一の省庁です。国民の健康と医療は現場の医師なくしてはあり得ません。今回の佐藤氏の事例は医師を敵にし、力で臨床医を服従させようとする意図が働いていると考えざるを得ません。
このような異常事態に対して、政治家も、心ある官僚も、そして国民も目を伏せていてよいものでしょうか。
2010年1月19日