きょうの社説 2010年1月20日

◎日航が更生法申請 再建急ぎ地方路線の充実を
 日本航空が会社更生法の適用を申請し、国の管理下で再建の道を歩むことになった。日 本と海外を結んできたナショナル・フラッグ・キャリアーの挫折は、日本経済の低迷と無縁ではなく、黒字化への道は一筋縄ではいかないだろう。それでも国民の「空の足」を維持し、地方路線の縮小に歯止めをかけるための新たな一歩と受け止め、官民が一丸となって社員ともども「日本の翼」を盛り立てていきたい。

 巨額の税金を投入する以上、経営再建に向けた道筋はガラス張りであることが前提にな る。法的整理により、破綻企業の印象が強まるのは不安材料だが、国民の理解を得て、新たな気持ちで出直すには、この方法が一番だったのではないか。官営会社のような「ぬるま湯体質」から脱却し、イバラの道を行く覚悟が求められる。

 羽田空港の発着枠拡大に伴って、国際ハブ化構想への期待が高まっている。羽田経由で 世界と結ぶことができれば、北陸にも大きなメリットがある。羽田便の一層の充実には日航と全日空の航空2社体制が不可欠であり、日航の再建が暗礁に乗り上げでもすれば、地方路線の充実は絵に描いたモチになりかねない。小松空港や富山空港にも影響が及ぶだろう。

 官民が出資する企業再生支援機構は、潤沢な資金の投入によって経営不安の払しょくに 努め、3年以内の再建を目指すことになる。人員はもとより機材や路線の縮小も必要だろう。ただ、地方空港にとって、日航の存在は重く、地方路線の大幅な減便・廃止は地域経済への打撃が大きい。地方路線に限っては、これ以上の縮小はくれぐれも慎重であってほしい。

 日航が共同運航を柱とした包括提携で基本合意している米デルタ航空は、2005年に 経営破綻し、07年に再建を果たした。当時、デルタの負債総額は3兆円を超え、日航よりも多かった。海外では航空会社の破綻・再建は珍しくなく、お手本になる例はいくらでもあるはずだ。不況の影響などで、航空業界を取り巻く環境は厳しいが、デルタにならって高コスト構造に果敢にメスを入れ、国際競争力を取り戻してもらいたい。

◎通常国会論戦 予算審議改革も必要では
 小沢一郎民主党幹事長らの政治資金問題をめぐり、通常国会は冒頭から与野党が激しく 対立する大荒れの展開となった。鳩山政権の予算を初めて審議する重要な場でありながら、旧態依然とした問題に時間が費やされるのは極めて残念というほかない。

 自民党は今年度第2次補正予算審議の条件として「政治とカネ」問題の予算委員会での 集中審議や参考人招致を求める一方、民主党は補正予算の早期成立を盾に拒否し、委員会質疑の日程も決まらない膠着状態に早くも陥った。国民生活に直結する予算を審議する予算委員会が、例によって「スキャンダル追及委員会」に終始してよいはずがない。予算審議と疑惑追及の優先度を争うより、双方を並行して議論できるような国会運営が大事である。

 政治不信をこれ以上広げないためにも与野党が一致点を見いだす努力を続けるとともに 、国会改革が今回のテーマの一つなら予算審議の改革も必要ではないか。政治倫理審査会の機能強化や別の委員会を設置するなど、「政治とカネ」は予算と切り離して議論できる土俵づくりを検討してほしい。

 政府・与党は今年度補正予算の月内成立と新年度予算の今年度内成立を目指している。 景気が二番底に沈む懸念が消えないなかで、補正予算を早期に成立、執行させるのは当然である。新年度予算は鳩山政権の「コンクリートから人へ」の方針のもと、公共事業が大幅に削られ、子ども手当や農家の戸別所得補償など政権公約に沿った事業が幅広く盛り込まれた。

 それらの政策が経済や暮らしにどのように影響するのか、予算の検証は例年に増して重 要である。行政刷新会議の事業仕分けをみても、個々の予算項目には修正すべき余地が少なくない。そうした議論を与野党で丁寧に積み上げ、より効果的な予算に仕上げていくのが国会の場である。

 予算委員会はテレビ中継されるため、野党が与党の疑惑を追及する主戦場になってきた 。形骸化した委員会審議を見直し、予算を疎かにしない国会論戦のルールづくりも急務である。