◆旭輝黄金鯱(あさひにかがやくきんのしゃちほこ)
名古屋城天守閣の金の鯱を盗んだと伝えられる柿木金助を主人公にした並木五瓶の「けいせい黄金〓(しゃちほこ)」を書き換えた作品。尾上菊五郎監修、国立劇場文芸課補綴(ほてつ)。
盗賊の柿木金助(菊五郎)は勅使になりすまして小田家の居城の那古野(なごや)城へ入り、天守閣の金の鯱を奪う。金助は父の敵である小田家の転覆と天下横領を狙っていた。
元の脚本に大幅に手を入れ、娯楽性の強い作品に仕上げた。幕ごとに変化に富んだ見せ場が用意されている。
2幕目は、共に勅使と偽った金助と向坂甚内(松緑)の那古野城内での対決。そこで、城主の小田春長(菊之助)は実は取り換え子で、甚内こそ本当の春長と分かる。続くのが、大凧(おおだこ)に乗った金助の鯱泥棒だ。
正体を見破られてからの変化を、菊五郎がからっと気持ちよく見せた。金助に拮抗(きっこう)する盗賊である甚内の松緑のセリフが力強く、菊之助は真実を打ち明けるくだりがうまい。
3幕では、美濃の隠れ家で金助が本当の春長(松緑)と再会。春長は金助の母の村路(時蔵)に育てられたことが判明する。老けを演じる時蔵がすごみと情を見せる。
大詰は、原作にはない「大黒戎太夫(えびすだゆう)内」。菊五郎の金太夫実は金助が軽妙。団蔵の強欲な戎太夫が場を盛り上げ、菊五郎らが千手観音ばりに四方から手を出す「金鯱観世音」のチームプレーが見事。「木曽川」では菊之助が本水での派手な鯱つかみを披露する。27日まで。【小玉祥子】
毎日新聞 2010年1月18日 東京夕刊