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社説

安保改定50年 世界の安定に生かす 1月19日(火)

 抑止力の観点から在日米軍の沖縄駐留は必要−。保守系の政治家や識者がよく口にする言葉である。

 その米軍が日本国内に基地を置いている根拠が日米安全保障条約だ。50年前のきょう、現行の条約が日米間で調印された。

 鳩山政権とオバマ米政権は、先の外相会談で両国関係を深める協議を進めていくことで一致した。その土台になるのが安保条約である。しかし、どういう関係を目指すのか、具体像は見えない。

   <弱い鳩山外交>

 米国は今、アフガニスタンなどで戦争を行っている。各国を巻き込みながら、泥沼化し、かつてのベトナム戦争のように出口を見失う恐れもある。

 米国だけで対応できない事態になった場合、安保条約とそれに続く日米間のさまざまな取り決めを根拠に、日本に軍事的な要請をしてくるかもしれない。そのときどう対応するか。米国に押し切られるように「同盟関係」が再定義され、より軍事色が強まる可能性も否定できない。

 沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題などで、鳩山政権の外交・安保政策の弱さが明らかになった。米側の論理に押されるだけでは国民の信頼を失う。憲法の枠内で、新たな関係づくりにどこまで主体的に取り組めるか。そこが厳しく問われている。

 日米安保は1951年に旧条約が調印された。日本が米側に基地を提供する内容でありながら、日本が他国から攻撃された際に米国は日本を守る、といった義務が明記されていなかった。こうしたことを改めた条約が60年、結ばれた。しかし、米国の世界戦略の変更などに伴い、条約の性格や運用が変化し続けている。

   <運用が心配に>

 一番の問題は、条約の再定義や関係強化の名目で、自衛隊の役割強化と米軍との一体化が進められてきたことだ。

 日米安保条約の本来の目的は、日本と極東の平和と安全を守ることである。ところが、96年の日米安保共同宣言で、条約の位置付けが「アジア太平洋地域の平和と安定」に変わった。

 その範囲がさらに拡大した。2005年、日米の安全保障担当閣僚が署名した在日米軍再編に関する文書にはこう書いてある。

 「日米同盟」は、「世界における課題に効果的に対処する上で重要な役割を果たしており、安全保障環境の変化に応じて発展しなければならない」。

 事実、2001年の米中枢同時テロ前後、米国は世界戦略を見直してテロとの戦いに突き進み、日本も呼応するように軍事面で対米傾斜を強めていった。政府は日本が武力攻撃を受けた際の、自衛隊を中心とする対処方針を定め、国民レベルでの深い論議をすることもなく、有事関連法を政治主導で次々と成立させていった。

 在日米軍の配置や装備に関する重要な変更には事前協議が必要だ、とする重要な取り決めも最初からないがしろにされてきた。

 日本への核持ち込みは事前協議の対象のはずなのに、協議なしに日本側が黙認することとした日米密約問題の存在がそれを裏付ける。そもそも協議自体、日米間で一度も開かれていない。

 この50年間、米国が世界各地で軍事作戦を続けてきたのに対し、日本は経済に力を注ぐことができた。積極的な海外援助で国際社会から評価されるまでになった。こうした側面は、日米安保条約の“効用”とも言えるだろう。

 半面、安全保障をめぐる環境は変化している。安全を脅かすのは国家間の覇権争いだけではなくなった。世界的に広がる格差がテロを生む要因になっている。米国の軍事力でも解決が難しい問題だ。教育や医療など、民生支援の重要性が増している。

 これからの時代、日本が担うべきはその先導役である。日米間の新たな関係構築に当たっては、軍事面だけでない双方の役割を明確にしなくてはなるまい。

 在日米軍の抑止効果には疑問の声もある。急速なグローバル化によって、経済が複雑に絡み合うようになっている世界の現状を考えると、戦争をするリスクに増して、経済損失によるリスクが国家にとってはダメージになる。経済を中心に国家間の関係が深まれば、抑止と同様の効果を発揮する、との考え方も出ている。

 日米双方がこうした視点を取り入れ、今後の日米関係のあり方を探る綿密な作業が欠かせない。何より地位協定の見直しも含め、多くの基地を抱える沖縄の負担を減らしていくことが急務だ。



   <新たな視点を>

 日米は戦後、半世紀以上にわたって交流を深めてきた。市民レベルの結び付きも強い。世界の安定に資する条約にするためにも政治家だけに任せておくのでなく、もっと国内論議を活発にしたい。

 平和憲法を持つ日本は、新たな視点と知恵を日米関係に吹き込む努力を強めなくてはならない。

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