離婚後300日以内に生まれた子を前夫の子と推定する民法の「300日規定」を根拠に、出生届を受理しなかったのは、法の下の平等を定めた憲法に違反する―。こう訴えて国と総社市に損害賠償を求めた岡山県内の女性の請求を、岡山地裁が棄却した。
原告の女性はドメスティックバイオレンス(DV)を受けて前夫と別居、離婚成立後に女児を出産した。「現夫の子」として総社市に出生届を出したが、300日規定で受理されなかった。判決は「一般に婚姻中に妊娠した子の父は、夫である可能性が高い。妊娠時期と離婚日によって区別することは不合理な差別とはいえない」と指摘し、認知など法的手続きで救済を図るべきだとの判断を示した。
女児も一時無戸籍となったが、現夫を父親と認める家裁の審判によって戸籍を得た。だが、こういった手続きだけで十分と言えるだろうか。
明治時代に施行された300日規定の考え方が、今の社会や結婚の在り方にそのまま当てはまるとは言えまい。法務省は2007年、離婚後の妊娠が明らかな子は300日以内の出生でも「現夫の子」と扱われるよう通達を出した。しかし、これで救済されるのは一部という。
原告の女性のように、DVから避難していたり、協議が長引いて離婚成立まで時間がかかる母親も多い。前夫の名が戸籍の父親欄に記載されるのを避けるため、出生届が出されず、結果的に無戸籍となってしまう子も少なくないとされる。
国会では3年前に法改正の動きがあったが、先の法務省通達で立ち消えになった。民主党は政策集の中に改正を盛り込んでいる。ぜひ議論してもらいたい。第一に考えなければならないのは生まれる子どもの権利だ。