8年余りにわたって続けられてきた海上自衛隊によるインド洋での給油活動が終了した。根拠法である改正新テロ対策特別措置法の期限切れに伴うもので、北沢俊美防衛相は派遣されている海自の護衛艦と補給艦に撤収命令を出した。
給油活動は、2001年の米中枢同時テロを受けて成立した旧テロ特措法に基づき、米国主導の「テロとの戦い」の一環として同年12月に始まった。自衛隊初の戦時下での海外派遣は、わが国の安全保障政策の転機ともなった。
目的は、テロリストの移動や武器、麻薬の密輸などを海上で阻止する活動を後方支援することにあった。インド洋で対テロ作戦に従事する米国や英国、パキスタンなど12カ国の艦船に燃料を補給。給油実績は939回に及び計約52万キロリットル(約715億円)を無償提供した。自衛隊員延べ約1万3千人が参加したが、犠牲者もなく活動が終えられたのは何よりと言えよう。
「顔の見える貢献」として国際的な評価も得たが、海自派遣に伴う給油延長の是非をめぐっては常に与野党の駆け引き材料となった。07年11月には当時野党だった民主党などの反対で旧法が失効し、いったん活動を終了。08年1月に新法が衆院再可決で成立し、再開した。
民主党は社民、国民新両党と連立合意を結ぶ際、1月での撤収方針を確認していた。しかし、撤収によって各国とのテロ情報共有の機会が失われる懸念もぬぐえない。8年間の給油活動の検証が必要ではないか。
「給油へのニーズが低い」などとして、鳩山政権は給油活動に代わってアフガニスタンの民生支援に重点を移す考えだ。昨年11月、アフガンの治安強化に向けた警察官支援、反政府武装勢力タリバンの元兵士の職業訓練、水利施設整備による農地開発推進など5年間で50億ドル(約4500億円)規模の支援策をまとめた。
しかし、アフガンの治安情勢は悪化するばかりだ。昨年1年間に民間人2412人が戦闘などに巻き込まれて死亡、駐留外国部隊の死者数も500人を超えるなど泥沼に陥っている。カルザイ政権の基盤も弱く、支援計画がたなざらしになる危険性もある。
給油活動の撤退に見合うだけの有効な支援が実現されなければ、国際社会からの評価は得られまい。アフガンの平和と安定、復興に寄与できる貢献策の具体化を急ぎ、支援の実をあげなくてはならない。