日本航空の経営再建問題は、法的整理の代表的な手法である会社更生法を活用した上で、官民出資の企業再生支援機構の支援で再建を目指すという方向が固まった。取引銀行団が再建案を大筋で受け入れた。再建手法をめぐっては法的整理か私的整理かで協議が難航したが、透明性がより高いとされる法的整理で決着した。
公的資金を投入する上で、国民の理解が得られないとして問題視されてきた日航の高額な企業年金にもめどがついた。会社側の減額提案に対し、改定に必要な退職者の3分の2以上の同意が集まった。
二つの難題の調整にめどがついたことで、長らく迷走してきた経営再建の道筋がようやく見えてきたといえよう。
日航は19日にも会社更生法の適用を申請し、同時に支援機構が経営支援を決定する見通しで、「事前調整型」の法的整理となる。関係者が事前に再建のための出資や再建中のつなぎ融資などを決めておく方法で、再生の姿を示すことで信用不安を抑える狙いがある。
だが、支援機構が日航株を100%減資して上場廃止の方針と伝えられたことから、13日の日航株価は前日に続き、売り注文が殺到し、ストップ安となった。今後の法的整理の手続きをめぐっても、どのような影響が出るかは予測しきれない。日航の当面の資金繰りに加え、利用者や取引先に混乱が広がらないよう、政府はじめ関係者は万全を期してもらいたい。
支援機構は日航を3年後に再生させる方針を掲げている。日航の次期最高経営責任者(CEO)には京セラの稲盛和夫名誉会長の就任が固まった。今後は新経営陣の体制、具体的な再建案づくりが焦点となる。再建案には、大幅な人員削減をはじめ、不採算路線の廃止などが盛り込まれる見通しだ。
日航はこれまで業績が悪化するたびに巨額融資で救済され、高コスト構造にメスを入れることができなかった経緯がある。ベンチャー企業を世界的企業に育てた稲盛氏のもとで、今度こそ「親方日の丸」的な体質から脱却し、抜本的な再生を着実に進めてほしい。
再建をめぐっては、1985年の日航ジャンボ機墜落事故の遺族らが、人員削減が進むことを憂慮し、運航の安全確保を求める要望書を政府に提出した。安全運航は言うまでもないが、社員の士気向上と一層の安全性向上につながる再建案を目指してもらいたい。