中国税関総署が、2009年の中国の輸出額が1兆2016億ドル(約111兆円)になったと発表した。金融危機の影響で前年比16・0%減ながら、既に昨年11月の時点で前年まで首位のドイツを抜いている。09年は中国が初めて世界一になる可能性が高くなった。
最大の輸出先は欧州連合(EU)で、米国への輸出がそれに続く。日本向けより東南アジア諸国連合(ASEAN)向けの方が多かった。多彩な輸出先をみると中国が「世界の工場」であることが実感できる。
中国は09年、国内総生産(GDP)でも日本を抜いて世界2位になるとみられている。同年の新車販売台数世界一も確定した。金融危機脱却でも世界をけん引し、米国とともに「G2」とも呼ばれる。
世界一の人口を持つ中国は労働集約型の産品を中心に高いコスト競争力を誇る。日本や欧米の主要メーカーが生産拠点を進出させており、鉄鋼生産や国の外貨準備も豊富だ。大量の製品を安く生み出し、世界へ売りさばく環境が整っている。
最近では賃金の上昇傾向や人民元の切り上げ圧力から外資が工場をベトナムなどへ移す動きもあるが、道路などのインフラ整備や部品供給力で中国に一日の長があるという。当面、中国の優位は揺らぐまい。
それでも他の新興国との競争をにらみ、中国は研究開発投資に力を入れ始めた。例えば風力発電など新エネルギーへの投資総額をみると、07年には約108億ドルを投じ、既に世界3位だった。中国政府は毎年巨額の科学技術予算を組み、幅広い分野で飛躍を目指している。
日本も安穏としてはいられない。政府のデフレ宣言もあって企業を含めて縮み思考がうかがえるが、日本の科学技術力は世界トップレベルであり、成長への潜在力はあるはずだ。
政府が年末にまとめた成長戦略が、力を引き出す弾みとして期待される。20年度までの平均でGDP名目3%の経済成長、失業率は3%台を目指す。環境・エネルギーや医療、介護、観光などを成長分野に挙げる。6月をめどに基本方針を肉付けして実現への工程表もまとめる。将来を見通せる実効ある政策を盛り込んでもらいたい。
政府の役割は重要だが、企業自体が元気を出す必要がある。内向き志向から打って出る姿勢に転じ、企業内の活力を引き出す経営が求められよう。中国の「輸出世界一」を、よき刺激とすべきだろう。