政府が障害者福祉制度を抜本的に見直す「障がい者制度改革推進本部」の下に新設した改革推進会議の初会合が開催された。会議のメンバーは6割の14人が障害者自身や家族らである。障害者の視点が制度改革に反映される意義は大きい。
従来も政府の障害福祉関係審議会には障害者らも参加していた。だが、今回は過半数を占めた。制度設計や政策立案に深くかかわることで、障害者が生き生きと暮らすための施策の充実にとどまらず、社会の意識や在り方まで変える可能性があると期待したい。
推進本部は、本部長を鳩山由紀夫首相が務め、全閣僚が参加する。推進会議は障害者問題に関して意見を述べることになっている。長妻昭厚生労働相が廃止を表明している障害者自立支援法に代わる新制度の設計などを議論し、今年夏ごろに中間報告をまとめる予定だ。
障害者自立支援法は、障害者の地域での自立と就労支援を目的に2006年に施行された。しかし、サービス利用者の負担を所得に応じた「応能負担」から原則1割自己負担の「応益負担」に変更したため、負担増になった障害者らから批判が噴出した。「生存権の保障を定めた憲法に違反する」として訴訟も相次いだ。
今年に入り、違憲訴訟の和解に向けて協議していた厚労相らと原告団、弁護団は訴訟を終結させることで合意した。調印した基本合意書では、国は自立支援法が障害者の尊厳を傷つけたことや生活への悪影響に反省の意を表明したほか、遅くとも13年8月までに障害者自立支援法を廃止し、新たな制度の実施を明記している。調印式後、厚労相は「障害者の意見を真摯(しんし)に聞く」と述べた。肝に銘じなければならない。