昨年中に全国で起きた交通事故による死者数は9年連続で減少し、1952年以来57年ぶりに5千人を下回った。悲惨な交通事故死に歯止めがかかってきたことは喜ばしい限りだ。この流れをさらに強めたい。
警察庁によると、交通事故死者数は4914人と前年より241人少なかった。過去最悪だった70年の1万6765人の3割弱である。事故発生件数や負傷者数も5年連続で減少した。岡山県内の事故死者数は107人(前年比7人減)、広島県は142人(同14人増)、香川県は70人(同9人増)だった。
死者数が減った主な要因について警察庁はシートベルト着用率の向上、飲酒や速度違反による悪質で危険性の高い事故の減少などを挙げている。警察の取り締まりや罰則の強化、官民連携による啓発活動など多彩な取り組みの成果と言えよう。
しかし、まだ5千人近くが亡くなっている現状を重く深刻に受け止めなければならない。中でもほぼ半数を占める65歳以上の高齢者への対策が急務だ。運転者、歩行者両面からの高齢者に対する一層の安全指導、必要に応じた運転免許証返納などで事故から高齢者を守りたい。
さらに気になるのが、依然として残るドライバー意識の甘さである。統計のある90年以降で最も少なくなったという飲酒運転による死亡事故にしても293件に上っている。飲酒運転追放の掛け声にもかかわらず、違反者は一向になくならない。一時は影を潜めていた運転中の携帯電話使用も、再び目にすることが多くなった。
交通事故は、被害者はもちろん加害者にとっても不幸な事態である。無理をせず、ゆとりを持って安全運転に徹してほしい。「事故ゼロ」へ一人一人の自覚と行動が問われている。