農家の高齢化や過疎化などで増え続ける耕作放棄地への対応が、大きな転換点を迎えるかもしれない。
原野化して農地への復元が困難な耕作放棄地について、長野県が農地化するのをあきらめ、山林として再整備する方針を打ち出したからだ。
以前から専門家の間で必要性が指摘されてきた措置である。担い手不足などを考慮すると、現実的な政策として全国に先駆けた試みといえる。
これまで農水省は食料自給率向上のため、耕作放棄地の営農再開を推進してきた。だが、2005年の調査では、耕作放棄地は20年前の約3倍の40万ヘクタール近くまで増加している。
理想はすべての耕作放棄地を農地に戻すことだろう。ただ、農家の高齢化が進む中、急傾斜地など農業条件が悪いため、やむなく放棄された農地を復元するのは容易ではない。
岡山県でも中山間地域では、食糧難の時代に無理して開墾したような田畑が放棄されているケースが少なくない。しかし、自然に任せて雑草などが生い茂ると、病害虫の発生源になったり、水路が傷んで周辺の農業に支障をきたす。
山林にして管理すれば、こうした問題をクリアできる上、新たな雇用の場が生まれる可能性がある。地球温暖化対策にもつながろう。
長野県は山間部を中心にした耕作放棄地で、実態に応じて農地から山林に用途変更する。国から森林整備の補助を受けられる道が開かれ、木材利用も検討する。
従来型の耕作放棄地対策には限界がある。農地化と山林化の両面で解消を目指す取り組みは効果が期待できる。全国の自治体も地域の実情に合った方策を早急に研究すべきだろう。