財政運営や経済政策で課題が山積する中、辞任した藤井裕久財務相の後任に菅直人副総理が就任した。新設の国家戦略担当相として存在感を発揮できなかった菅氏だが、18日召集の通常国会では、予算審議の最前線に立つことになる。
就任後初の記者会見で、菅氏は景気の二番底回避を強調した。3月の決算期末を控え、資金繰りや雇用不安の増大が懸念されている。当面は追加経済対策を盛り込んだ2009年度第2次補正予算案の早期成立、引き続き10年度予算案の年度内成立に向けて、全力で取り組まなければならない。
菅氏は、特別会計を含む総予算の全面見直しにも意欲を見せた。もともと民主党は新たな財源確保のために、予算編成の仕組みを根本から見直し、税金の無駄遣いをなくすと主張していた。政権交代直後は10年度予算案の年内編成が最優先され、編成作業そのものの見直しが不十分だったことは否めない。
しかし、11年度はマニフェスト(政権公約)実現に向けて、一層の財源確保が必要になる。この際、予算の在り方を徹底的に洗い直すべきだろう。中身が不透明とされる特別会計にもしっかり切り込んでもらいたい。菅氏の指導力が問われよう。
会見では円ドル相場の水準について、円安方向に相場を誘導する異例の発言をして波紋を広げた。これについて鳩山由紀夫首相が昨日、苦言を呈したが、菅氏は閣議後の会見で、輸出産業のためには円安が望ましいとの認識を重ねて示した。
為替相場への率直な言及に、通貨当局者としての資質を疑問視する声も少なくない。円高阻止の具体策がないままでは、市場の不信を招きかねない。市場の安定確保を担う財務相として、慎重な姿勢が求められる。