迷走してきた日本航空の経営再建問題について、政府は会社更生法を適用した法的整理によって再建する方向で最終調整に入った。
官民出資の企業再生支援機構が今月中に日航支援を決定する見通しであるのを踏まえ、8日に菅直人財務相、前原誠司国土交通相ら関係閣僚が協議、政府としての方針を決めた。再建手続きの透明性を確保したい考えで、妥当な判断と言えよう。
日航の再建手法をめぐっては、法的整理か私的整理かで綱引きが激しさを増していた。支援機構は、取引銀行団の同意を取り付けた上で会社更生法の適用を申請する事前調整型の再建を検討している。米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)の支援で米国政府が活用した手法である。
裁判所の管理下で進められる法的整理のメリットは、手続きの透明性が高まり、社債などを含めた債務の大幅カットも可能になることだ。公的資金を活用することへの国民の理解も得やすい。
これに対し、日航や取引銀行は、法的整理になれば債権放棄額が膨らむ上、信用不安による顧客離れや運航への支障も懸念されるとして反発。みずほコーポレート銀行など3行は債権放棄を軸にした私的整理による独自の再建案をまとめ、国交省や支援機構に提示していた。
政府は法的整理に踏み切った場合でも、燃料、部品などの商取引による債権は契約通り支払い、通常通り運航を継続する方針だ。「空の足」を守り、運航の安全性を確保するためにも混乱は避けねばならない。
一方で、安易な救済は「親方日の丸」体質を温存させることにもなりかねない。私的整理では「倒産」のイメージが弱く、社会的信用も維持されやすかろうが、日航の体質を抜本的に改める再建にはつながらないのではないか。
支援取り付けの条件とされる企業年金減額の決着期限も迫る。退職者の3分の2以上の同意を取り付けられるかどうか。再建の行方を左右しかねないだけに、日航による粘り強い説得が求められる。
支援機構の再建計画案の策定では、赤字の国際線の運航をどうするかなど課題も抱える。取引銀行団も最終的には法的整理を受け入れる見通しとなった。政府は支援機構と歩調を合わせ、再建への道筋を早期に明らかにすべきだろう。併せて日本の航空行政の在り方も見直す必要がある。