古本屋の殴り書き(書評と雑文) このページをアンテナに追加 RSSフィード


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2008-09-14

腐敗しきった警察組織/『遺言 桶川ストーカー殺人事件の深層』清水潔


 ストーカー規制法のきっかけとなった事件のルポ。著者は写真週刊誌FOCUS』の記者。覗き趣味イエロージャーナリズムにも良心があることを示した傑作だ。腐敗しきった埼玉県上尾暑の実態を暴き、挙げ句の果てには著者が犯人を特定した。


 私は全く知らなかったのだが、桶川ストーカー事件の犯人はヤクザまがいの人物で、不特定多数チンピラを使って嫌がらせを繰り返していたという。被害者を刺殺したのも彼の配下だった。


 身の危険を感じた女性は、何度も埼玉県上尾暑に足を運んだ。時には両親を伴って。しかし、警察は全く動こうともしなかった。それどころか、事件を闇へ葬ろうとした節(ふし)すら窺えた。


 しかし、私が驚いたのはそれからだった。1時間も話をしたあとだったろうか。そろそろ失礼しようかと思っていた矢先だった。雑談の中で私がポロリとこぼした言葉から、私は思いもかけない事実にぶちあたった。

「そういうえばニセ刑事まで来たそうですね。告訴を取り下げてくれとかって……」何気なくそう言った私に返ってきたご両親の返事はこうだった。

「いえ、それを言ったのは本当の刑事さんです。私達の告訴の調書を採った人です」

 一瞬私はその言葉の意味が分からなかった。どういうことだ。それでは本物の刑事が、一度受理した告訴を取り下げさせようと言ってきたというのか。何だそれは。そんなことがあるのか。

「告訴は取り下げてもまた出来るとも言ってました」

 そんなわけはない。刑事訴訟法では一度取り下げた告訴はその件で再度告訴出来ないとちゃんと書いてある。では刑事が、嘘をついてまで告訴を取り下げさせようとしたというのか。


【『遺言 桶川ストーカー殺人事件の深層』清水潔新潮社2000年新潮文庫2004年)】


 警察が犯罪を犯そうと思えば、これほど簡単なことはない。埼玉県上尾暑の刑事はマスコミに何度も嘘の情報をリークして、被害者家族を苦しめた。警察というのは、暴力を振るうことを公認された唯一の組織である。彼等が振るう暴力、彼等が垂れ流す嘘、彼等が行う意図的な不作為――これらは不問に付される。なぜなら、“捜査”という大義名分があるからだ。


 私の世代であれば、殆どの人がテレビドラマ太陽にほえろ!」に夢中になったことだろう。こうしたドラマによって、当時小学生だった我々は「警察=正義」という価値観を刷り込まれた。昨今、放映されている「警察24時」の類いも同様の目的があると思われる。こうした番組で、せっせと裏金づくりに励む警察官は絶対に出て来ない。


 函に入ったミカンは、一つが傷み始めると、あっと言う間に次々と腐り出す。政治家が腐っているから、官僚も警察も腐敗する。悪臭に気がつかなくなれば、あなたも私も腐り始めているのだ。

遺言―桶川ストーカー殺人事件の深層 桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

(※左が単行本、右が文庫本

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