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社説

震災15年伝える生かす(2)国際支援/被災の「痛み」を知るからこそ 

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ハイチの大地震では多くの建物が倒壊した

 大統領府や病院、学校も倒壊した。民家は軒並み崩れ、住民が泣き叫ぶ。犠牲者の遺体は道路に放置されたままだ。

 カリブ海のハイチを襲ったマグニチュード(M)7・0の大地震は、首都ポルトープランスをまひ状態に陥れた。現地の状況が明らかになるにつれて、被害は拡大するばかりだ。

 国民のほとんどが1日2ドル以下で暮らす最貧国。これまでクーデターや暴動が相次ぎ、国連の平和維持活動(PKO)や国際援助がなければ、国は立ちいかない。その国連要員が入っているビルも全壊した。

 欧米など各国の救援チームの活動が本格化しているが、治安悪化も懸念される。

 国情は違っても、被災者が立ちすくむ姿は、15年前の光景を思い起こさせる。

貧しさが被害を拡大 「世界の災害リスクは、貧しくガバナンス(統治)が弱い国に集中している」。2009年版の国連世界防災白書は、こう指摘する。貧しい国ほど、地震に弱い建物が多く、災害対策が遅れがちだ。しかも貧困が被害を拡大させる悪循環にある。ハイチは、そうした国の典型といえる。

 災害に対する途上国の備えを向上させ、被害を減らすことは、世界が最優先で取り組むべき課題になっているが、現実にはなかなか進んでいない。

 「地震の犠牲者のほとんどは、倒壊した建物の下敷きになって亡くなっている。多数の人が集まる学校や病院など公共施設の安全性を高めることは、被害を最小限にするために不可欠だ」。兵庫県防災計画室長の村田昌彦さんは、そう話す。

 05年のパキスタン地震や08年の四川大地震で、村田さんは復興支援に向けた調査のために現地入りした。強度不足が原因で、校舎があちこちで倒壊していた。安全な学校の建設を求める声が相次いだ。

 県は県民から寄せられた義援金をもとにインド、スリランカ、インドネシアなどの被災地でも、学校再建や耐震補強を支援してきた。技術研修も行う。こうした支援は、途上国にとって心強いものに違いない。

 阪神・淡路大震災のとき、被災地には76の国・地域や機関から支援の申し入れがあった。世界の人々が兵庫に目を凝らし、手を差し伸べてくれたことが被災者を励まし、大きな支えになった。

 四川大地震で県は、病院再建や被災地での心のケアを担う人材育成を支援する一方、研修生の受け入れも続ける。こうした国際協力には、阪神・淡路で受けた支援への恩返しの思いが込められる。

 被災を経験したことで、それまで物資やお金が中心だった自治体や市民らの海外支援のあり方は大きく変わった。災害への備えや復旧・復興過程のモデル事例を蓄積して世界に発信する。さらに、安全なまちづくりなどの担い手育成を手助けする。そんな取り組みを前進させたい。

 県は02年春、被災経験や教訓を伝える拠点として、神戸東部新都心に「人と防災未来センター」を開設した。一帯には国際防災機関や援助機関が集積する。

 07年には県と国際協力機構(JICA)が、途上国で防災に携わる人材を育てる国際防災研修センターをつくった。毎年、40を超える国・地域から百数十人の公務員や医療関係者らを受け入れる。

 昨夏の大津波で147人が犠牲になったサモアからは、赤十字社職員のジュウェル・ルティ・トロアさんが「災害後の心のケア」コースの研修を受けた。「母国には心のケアの専門医が1人しかいない。人材を増やしていくためにも、研修支援はうれしい」とトロアさん。さまざまな機関が連携する兵庫ならではの国際協力である。

兵庫の蓄積を世界に 震災から15年の節目となる17日には、28カ国の防災担当閣僚らが集まり、アジア防災会議が神戸で始まる。震災をくぐり抜けた兵庫は、防災協力や減災の取り組みを促す世界のセンターになりつつある。

 「阪神・淡路の経験を深めるだけでなく、世界の被災経験を蓄積し、被害をくい止める力へと育てることが私たちの責務」。初代の県防災監を務めた前副知事の斎藤富雄さんは、国際協力の意義をこう話す。

 被災経験や復興の道筋を蓄積し、人から人へと伝えていく。さらには、災害の備えや復興を担う人づくりを支える。被災の痛みを知るからこそ、世界の被災者にとって必要な支援ができるはずだ。そうした貢献は、「被災地責任」といってもいい。

 支援や情報発信のネットワークを兵庫から世界へ、さらに広げていきたい。

(2010/01/15 10:18)

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