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社説

遺族の声/痛みは消えない震災15年 

 阪神・淡路大震災から15年が近づいてきた。まちの外観に被災当時の惨状はうかがえず、さまざまな復興事業も終わりつつある。震災はずいぶん遠くなった。そんな実感をもつ人は少なくないだろう。

 しかし、被災者の内面が同様に立ち直っているわけではない。とりわけ、家族を失った人たちの悲しみや喪失感は、なお深いものがある。震災15年を前に、本紙が行った遺族アンケートが、あらためてそのことを教えてくれる。歳月を重ねても、決して忘れてはならない視点だと思う。

 調査は約600の世帯にお願いし、300人あまりから回答をいただいた。

 突然の災害で、かけがえのない命を奪われた。あまりに理不尽な死は受け入れられたのだろうか。回答をみると、2割以上の人がいまも受け入れられていない。とくに、子どもを亡くした遺族の3人に1人が受け入れられないと感じている。

 心理や生活状況の設問でも、わが子を失った遺族ほど、亡くした人や震災当日のことを思い出すという回答が多かった。

 この結果ひとつとっても、「遺族」とひとくくりにしては見えてこない震災15年の現実が浮かび上がる。さらに、受け入れられたと答えても「必ずしも乗り越えたということではない」との指摘が重い。

 アンケートでは、いま伝えたいことを自由に書いてもらった。その記述からは、数字だけではくみ取れない遺族一人一人の痛みとともに、支えてくれたものもさまざまだったことがよく分かる。

 とはいえ、思いを語り尽くしたとは到底いえないだろう。添えられた文章の後ろにある悲嘆や、それを乗り越えようとした日々への視線は忘れないでおきたい。

 その意味で、気になるのは回答がなかったほぼ同数の遺族のことだ。なかには、震災を思い出すから答えたくない、答えられないという人もいただろう。無言のメッセージは、癒やされようもない遺族のいまを伝えているのかもしれない。

 震災の日以降、被災地は懸命に生活再建やまちの復興に取り組んできたが、遺族のケアは十分目が向けられたとはいえない。それだけに、家族を失った経済的、精神的影響がいまもある、という人が半数を占めたアンケート結果は重く迫る。

 「いつまで震災のことを」という言葉に傷つき、何事もなかったような街並みに違和感を抱く。「1・17」を前に、そんな被災者がいることを心に刻みたい。

(2010/01/12 10:07)

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