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社説

病気腎移植/臨床研究も透明性が前提 

 治療法として妥当性を疑われてストップしていた病気腎移植が、このほど「臨床研究」として約3年ぶりに再開された。

 広島県呉市の呉共済病院で腎臓がんの患者から摘出された腎臓を愛媛県の宇和島徳洲会病院へ運び、同病院の万波誠医師らが腫瘍(しゅよう)を除いて慢性腎不全の患者に移植した。術後の経過はいずれも順調のようだ。

 病気腎移植は、がんや尿道狭窄(きょうさく)などを理由に摘出された腎臓に、処置を施して別の患者に移植するもので、万波医師らのグループは1991年から2006年にかけて計42件行ったことが分かっている。

 日本移植学会など関係学会は07年、「医学的妥当性はない」などとする見解を出した。その後、厚生労働省は臨床研究以外の病気腎移植を禁止する一方で、対象疾患を制限しない通知を行っている。

 病気腎移植で問題になったのは、移植に至る経緯が不透明なことや、記録が不十分で科学的検証が難しいことだ。

 万波医師らは、患者に黙って摘出したり移植したりしたことはないとするが、説明と同意(インフォームドコンセント)を書面にしたものがない。腎臓がん患者から腎臓を移植すると、一緒にがんも移植しかねない。患者から丸ごと摘出する必要があったかどうかなど疑問も残す。医学会が「妥当性はない」とする理由はそれだ。

 病気腎の移植を受けて助かった患者がいるのは事実だし、早期再開を求める声も少なくない。本格的再開を目指すなら計画や臨床成果を公開し、学術的な妥当性を第三者の目で検証する必要がある。そのためにも「透明性」が欠かせない。

 本来、廃棄されるべき病気腎を再利用せざるを得ない背景にも目を向けておきたい。腎移植を求める国内の待機患者は優に1万人を超えるが、移植を受けられるのは生体、死体合わせて年間1千例程度だ。

 死体腎移植は臓器移植法の施行前から行われてきたが、法に基づく脳死判定が厳格に実施されるようになって、件数はむしろ伸び悩んでいる。一方、生体腎の移植は臓器提供者の肉体的負担が大きく、望ましい医療とは言いがたい。中国やフィリピンなどへ腎を求める人が後を絶たないのも、臓器不足が大きな理由だ。

 臨床研究で有効性が証明されれば、先進医療と認められ、保険適用となる可能性もある。生体腎でも死体腎でもない「第三」の選択肢になるのはそのときだ。何より透明な手続きを忘れないでもらいたい。

(2010/01/12 10:09)

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