社説
中国新車販売/首位交代が示す勢いの差
2009年の新車販売で、中国が米国を追い抜き、初めて世界首位に立った。
金融危機のきっかけをつくり、不動産市況の低迷や高失業率にあえぐ米国。かたや中国は、いち早く危機から脱し、今年には国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界第2の経済大国に躍り出る見込みだ。
新車販売をめぐる首位交代で、経済の勢いの差を見せつけた形だ。
米調査会社のまとめによると、米国の販売台数は前年から2割以上減り、1043万台弱にとどまった。中国は1〜11月の合計で1223万台になり、年間を通じての首位が確定した。通年では1300万台に達するとみられている。
米国では地方金融の破(は)綻(たん)が相次ぎ、企業倒産の増加に歯止めがかからない。失業率は10%台に高止まりし、消費者は車など高額商品の購入に慎重になっている。米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーが破綻し、事業を縮小したことも響いた。
米国の景気回復の足取りは重く、今年の販売も1100万台にとどまりそうだ。
新車販売の不振は、先進国に共通する。日本は昨年、31年ぶりに500万台を割った。欧州は微減とみられる。
対照的に、中国は世界的な不況のなかでも、昨年の販売台数は4割増という驚異的な伸びを示した。小型車を対象にした減税措置などの景気刺激策が奏功し、昨年の成長率は8%超えが確実視されている。中国社会科学院は今年も9・1%とさらに高い成長を予測する。新車販売も、1割以上増えるとの見方が強い。
同じ新興国のインドでも、昨年4〜11月の新車販売は前年から2割増の121万台になった。今後、世界の新車販売の主戦場が、モータリゼーション時代を迎えた中国やインドなど新興国市場に移っていくのは間違いない。
中国でトップシェアを握るドイツのフォルクスワーゲンと、インドで5割近いシェアを誇る日本のスズキが提携するのも、世界的な販売激化をにらんでのことだ。
新興市場でのシェアに加え、環境対策、電気自動車の開発がメーカーの将来を左右する。日本のメーカーは、高い技術と低コスト化で世界シェアを伸ばしてきた。
変わりつつある世界市場で生き残っていくためにも、その強みをさらに磨く必要がある。これは自動車メーカーに限らず、日本産業界全体の課題だろう。
(2010/01/08 10:25)
社説
- 2010/01/19 震災15年伝える生かす(5)経済復興/教訓を地域再生の原動力に
- 2010/01/18 震災16年目/「復興文化」を発信したい
- 2010/01/18 小沢氏側近逮捕/民主党は自浄能力を示せ
- 2010/01/17 震災15年伝える生かす(4)命を守る/あの日の誓いを新たにしたい
- 2010/01/16 震災15年伝える生かす(3)災害時の医療/場数を重ね足腰の強いものに
- 2010/01/15 震災15年伝える生かす(2)国際支援/被災の「痛み」を知るからこそ
- 2010/01/14 震災15年伝える生かす(1)復興まちづくり/この経験を地域力の向上に
- 2010/01/13 日米外相会談/関係修復の糸口にしたい
- 2010/01/13 消費電話相談/トラブルの防止に生かせ
- 2010/01/12 遺族の声/痛みは消えない震災15年