社説
財務相辞任/首相の指導力が問われる
「正念場の一年」を迎えた鳩山政権は、通常国会開幕を目前にいきなり窮地に追い込まれた。
藤井裕久財務相が、体調不良を理由に辞任した。2009年度2次補正予算案と10年度予算案の審議で、首相と並んで答弁の中心に立つ要の閣僚である。後任には、国家戦略担当相として予算編成を側面から支えた菅直人副総理を起用するが、召集まで10日余りに迫った時期の財務相交代で野党の追及が厳しさを増すことは確実だ。国会審議への影響は計り知れない。
鳩山由紀夫首相は年頭会見で、景気の「二番底」回避に向けて予算案の年度内成立に全力を挙げる考えを強調した。予算成立がずれ込めば、景気への影響が懸念され、政権の求心力低下は避けられない。
政権発足後、藤井氏は麻生政権が編成した09年度1次補正の凍結と2次補正予算案の編成、さらに新年度予算案編成の実務を仕切った。並行して政府税制調査会会長として税制改正大綱もまとめるなど、激務が続いていたことはたしかだ。77歳という年齢を考えれば「相当疲れた」と言うのも無理はない。
高齢を理由に一度は政界引退を表明していた藤井氏を口説いて昨年の衆院選に擁立し、財務相に起用したのは首相自身だ。その判断が妥当だったのかどうか、任命責任があらためて問われる。
辞任の背景には、民主党の小沢一郎幹事長との確執や、予算編成の主導権をめぐる菅氏との対立もとりざたされている。
鳩山首相は、「政策決定の内閣一元化」を掲げながら予算編成の最終段階で小沢幹事長に主導権を譲った。国家戦略室の格上げを先送りしたため、予算編成の司令塔が不明確になった。
藤井氏の辞任が、決断すべき場面でリーダーシップを発揮できなかった首相への失望感の表れだとすれば問題は深刻だ。
懸案は予算審議だけではない。
財源不足で修正せざるをえなかったマニフェストを今後どう再構築するのか。米軍普天間飛行場の移設問題、首相の偽装献金問題に加え、小沢幹事長の資金管理団体の土地取引をめぐる疑惑が生じている。
首相は年頭会見で「初心に帰り、国民のための政治をつくりあげる」と述べた。
国民が政権を見る目は厳しさを増し、まさに正念場である。首相が指導力を発揮し、本格的な政治主導の態勢づくりにアクセルを踏むしかない。
(2010/01/07 10:17)
社説
- 2010/01/19 震災15年伝える生かす(5)経済復興/教訓を地域再生の原動力に
- 2010/01/18 震災16年目/「復興文化」を発信したい
- 2010/01/18 小沢氏側近逮捕/民主党は自浄能力を示せ
- 2010/01/17 震災15年伝える生かす(4)命を守る/あの日の誓いを新たにしたい
- 2010/01/16 震災15年伝える生かす(3)災害時の医療/場数を重ね足腰の強いものに
- 2010/01/15 震災15年伝える生かす(2)国際支援/被災の「痛み」を知るからこそ
- 2010/01/14 震災15年伝える生かす(1)復興まちづくり/この経験を地域力の向上に
- 2010/01/13 日米外相会談/関係修復の糸口にしたい
- 2010/01/13 消費電話相談/トラブルの防止に生かせ
- 2010/01/12 遺族の声/痛みは消えない震災15年