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社説

転換のあとに(5)議会の自覚/試行錯誤が地域主権に通じる 

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議会報告会では質問に答える側に

 日本の政治が変わった。地方でも、問われてきた議会改革があらためて大きな課題になる。政権交代をもたらした有権者の1票が、その流れを促すかもしれない。

 「地域主権」の時代に向けて改革が遅れると、その担い手どころか、お荷物になりかねない。そう自覚し始めた議員もいるだろう。足元の民主主義を見つめ直す動きが、兵庫県内でどこまで広がるか。

        ◇

 県内の各議会を見渡せば、改革のトップランナーがいるわけではない。それでも、市町合併を経験し、自らの存在意義を問い直そうとする議会人が動きだしている。

 例えば養父市議会である。昨年12月、2010年春の制定を目指す議会基本条例の条文づくりが大詰めを迎えていた。

 基本条例は、議会の役割と責任を明文化する議会活動の最高規範と位置づけられる。06年に北海道栗山町が全国で最初に制定して以来、100を超える議会が制定したか、検討中という。県内では、朝来、洲本市議会が昨年制定し、加西市議会なども制定を目指している。

 養父市は旧4町の合併から6年目を迎える。だが人口減少、高齢化、財政力低下に歯止めがかからない。議員定数は合併特例による56が08年の改選時には18に減った。それでも多い、との声さえ聞こえる。

 一方で合併効果を期待する市民の要望は多様化する。利害調整の難しさと政策決定の責任が増し、議会全体の機能強化が急務になっている。このため、08年から基本条例の検討を始めた。

 議会は何のために存在するのか。市民との関係はどうあるべきか。議員が分担して書いた素案を1項目ずつ議員同士で議論し、修正を繰り返す。そのための調査特別委員会は9カ月で30回近くになる。そして、ごく当たり前のことに行き着いた。

 「議員は、市民全体の代表者」

 「議会は、議論の場である」

 こうした議会改革の動きは2000年代に入って間もなく全国各地で始まっており、養父の歩みは早いとはいえない。だが、その過程こそが再生の出発点といえる。

 効用大きい報告会

 改革を促す試みに、多くの議会が取り組む「議会報告会」がある。議案に対し議会はどんな議論をし、どう結論づけたか、市民に説明する場だ。意見を聞くだけでなく、実現できないものは理由を示し、説得しなければならない場面もあるだろう。議決に責任を持つ議会の一員としての自覚が、そこに芽生えてくる。

 こうした報告会を、養父市議会も基本条例に先行して2回実施した。財政難や過疎対策など地域の課題を問う声に交ざり、「議員はどこを見て活動しているのか分からない」といった厳しい意見も出た。

 住民からの風当たりが強いのは、どの議会も同じ。それを受け流すか、受け止めるか。ここが分かれ目になる。

 批判を受け止め、議会の姿を住民の目にさらすことで得られる成果は議員にとっても大きい。報告会で不特定多数の人を説得できるかどうかが、政策の判断材料に加わる。政策や財政に精通していないと説明もできない。議員の能力が鍛えられ、行政との緊張関係が生まれてくる。

 さらに、議員の資質を見る住民の目も養われる。選んで後は「お任せ」の1票と、4年間の活動の評価として投じる1票では明らかに質が違う。その積み重ねが議会全体の質を高め、まちを元気にする。

 昨年の政権交代を経験して、有権者の政治意識はなおさら鋭くなるだろう。

 進化する住民参画

 基本条例の県内第1号となった朝来市議会も養父と同様、合併後のまちづくりで議会としての役割をどう果たすか、試行錯誤の途上だ。09年度予算案の採決で同市会として初めて記名投票を実施し、議決責任を市民に明確にした。小さな一歩だが、踏み出したことに大きな意義がある。

 鳩山政権が行った「事業仕分け」は自治体が積み重ねた実績を国が応用し、さらに活用する自治体が増えた。滋賀県草津市は市民から無作為に判定員を募った。京都府議会の民主党府議団は、仕分け結果を予算要望に生かしている。多様な手法を重ねながら、住民の参画が進化している。

 地方議会こそ衆知を集める努力が必要だ。古めかしい権威に閉じこもらず、住民とともに歩むという原点に立てば、市民活動や地域の専門家と協力して政策立案する道も開ける。試行錯誤の一つ一つが、地方議会を生き返らせる。 =おわり=

(2010/01/06 10:03)

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