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社説

転換のあとに(2)加古川の試み/脱温暖化で流域をうるおす 

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流域全体で脱温暖化構想が進む

 温暖化を防がないと、地球は危機に直面する。いまや世界の共通認識になったといっていい。市民や地域社会、国、企業にとって脱温暖化は差し迫ったテーマだ。

 私たち一人ひとりが掛け声だけでなく、行動していかねばならない。どう具体化するのか。幅広い市民グループが環境と経済の調和を掲げて動き始めた加古川流域の試みから、一つのヒントが見えてくる。

 加古川は、丹波から播磨灘に注ぐ全長96キロの1級河川である。流域面積は東播磨全域と丹波南西部、神戸市北区など1730平方キロに及び、県内最大規模をもつ。

 暮らしと経済のあり方を見直そうという運動は、この広大な流域が舞台だ。温暖化対策をキーワードに、上流と中流、下流の3地域が連携してCO2削減に努め、地産地消も視野に入れた低炭素社会をめざす。

 提案しているのは、県内の行政、企業関係者や大学教員、市民ら約50人でつくる「森の研究会」。環境や地域づくりなど各分野で活動する人たちが加わり、それぞれの立場で温暖化を考えるグループである。

どうなる役割分担

 具体的には、流域の64%を占める荒れた森林の整備を進めてCO2吸収量を増やし、クリーンエネルギーの利用を促進する。さらに、中下流域の工場などと排出量取引の仕組みをつくり、循環型の流域社会を協働で築いていく。そんな構想である。

 環境対策といえば、これまで各市町や企業単位で取り組まれてきた。だが、ばらばらでは効果は限られる。今後は広域でより効果的に、との発想がベースにある。

 森の研究会の政策提案によれば、上流の農村部で間伐材を使ってバイオマス燃料をつくり、臨海部の事業所などでエネルギー源にしてもらう。製造プラントでは、リタイアした人たちが作業を受け持ち、お金を地域内で環流させていく。そうすれば、過疎と高齢化、雇用対策にもつながる。

 温暖化対策を軸に、加古川流域の活性化にもつなげようという市民主導のプロジェクト提案だが、実現には課題が多い。

 温暖化対策として、鳩山内閣は温室効果ガスの2020年までの25%削減(1990年比)を掲げ、環境技術の研究開発を進める方針を立てている。この大目標に近づくには、まず国と地方、企業の役割など具体策を明確に示すことが重要だ。

 自治体や企業、家庭など各レベルでの削減目標と行動指針を早く提示しなければならない。そうすれば、加古川流域の取り組みも方向性を定めやすくなるだろう。

 同じような指摘は、温暖化対策をビジネスチャンスととらえる企業からも挙がる。

 米自動車大手GMの破綻(はたん)に代表される経済危機のあと、ハイブリッドカーや太陽光発電、エコ家電などの産業分野が活気づいている。いまや、環境問題に対応した製品開発の成否が企業の業績や将来性を大きく左右するまでになった。

 それだけに、環境と経済を融合させた国の具体的な成長戦略を望む企業は多い。その一つ、早くから環境設備などの開発を進める神鋼環境ソリューション(本社神戸)では、こんな提案もする。

 いまのような一代限りの住宅ではなく、エコ対策を講じた「千年住宅」をつくれないか。環境保全と内需拡大が期待できる、こうした住宅政策を国が打ちだせば、環境と経済の両立に通じるだろう。

 日本は、省エネなど個別の環境技術では世界最高水準を誇る。だが、戦略づくりでは立ち遅れる。環境に配慮した製品をつくる時代は終わり、今後は環境対策がないと、モノが売れなくなるとの声は強い。

 「産業の環境化」から「環境の産業化」へ。指摘される世界的な潮流変化をにらみ、国のビジョンづくりが欠かせない。

産官学民の連携で

 「森の研究会」では、流域の県民局や市町関係者、住民グループが集まり、温暖化防止の流域協議会設立に向けた準備会を近く発足させる予定だ。環境保全と地域の発展を調和させるには、何をどうしていくべきか。官民がひざを交えて話し合える場づくりが第一歩だろう。

 かつての公害大国・日本は、環境対策でさまざまな革新を進めた。脱温暖化という地球規模の要請を受け、さらに新たな技術を生む可能性がある。そんな潜在力に目を向けながら、目の前の危機に対処し、低炭素社会をめざしていかねばならない。

 国も自治体も、企業も地域社会も連携して取り組む姿勢が要る。加古川流域から、そのモデルが生まれるかもしれない。

(2010/01/03 10:42)

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