小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる問題が重大な局面を迎えた。
東京地検特捜部が、当時、陸山会の事務担当で元私設秘書の衆院議員石川知裕容疑者らを政治資金規正法違反容疑で逮捕したのだ。
現職の国会議員を含む小沢氏の側近が3人も逮捕される異例の事態だ。
石川議員の説明があいまいなうえ、証拠隠滅の恐れがあったためとみられるが、何より小沢氏が任意での事情聴取の要請に応じなかったことが最大の要因ではなかったか。
それなのに、きのう開かれた党大会で小沢氏は「不正なお金は使っていない」「積み立ててきた個人の資金」と言うだけで幹事長続投を表明した。
鳩山由紀夫首相も、小沢氏を信頼しているとして幹事長ポストにとどまるよう求めたという。
これでは野党は言うに及ばず、国民も納得できまい。
政権交代によって浄化が期待されていた「政治とカネ」の問題で、不信を招いた小沢氏の政治的、道義的責任は極めて重い。与党内からも辞任を求める声が上がるのは当然だ。
18日からの通常国会では野党が攻勢をかけてくるのは必至で、参院選への影響も避けられないだろう。
「やましいことはしていない」と言うのなら、小沢氏は事情聴取に応じるとともに国会の場などを通じ国民に対して説明責任を果たすべきだ。
陸山会が東京都内の宅地を購入したのは2004年10月。購入に充てられた4億円の収入などを政治資金収支報告書に記載しなかった(虚偽記載)というのが石川議員の逮捕容疑だ。
調べに対し、記載ミスとしていたこれまでの説明を一転させ、虚偽記載を認める供述をしているという。
だが、焦点は4億円の原資の出所と小沢氏がどうかかわっていたかだ。
石川議員の弁護人は「小沢氏が父親から相続した資産を家で保管していたもの」と説明するが、検察当局は、国が発注したダム工事の受注をめぐるゼネコンからの献金が原資の一部だったとの疑いを持っている。さらには、不自然な経理操作を繰り返していたことにも関心を寄せているようだ。
小沢氏は検察の捜査を「とうてい納得できない」と批判。両者の対立が取りざたされているが、大事なのは法と証拠に基づく真相の解明だ。検察当局は捜査の本道を歩んでもらいたい。
解せないのは鳩山首相だ。なぜ、小沢氏に説明を尽くすよう指導しないのか。党も独自調査を行うなど、今度こそ自浄能力を発揮するべきだ。
そうでないと政権交代後、初の党大会がかすんでしまったように、めざす参院選での単独過半数獲得はおろか、政権の足元さえ揺るぎかねない。
[京都新聞 2010年01月17日掲載] |