選択的夫婦別姓制度の法制化に向けた動きが本格化してきた。
千葉景子法相は、通常国会(18日召集)中に民法改正案を提出する意向を固めた。
現行民法は、結婚した夫婦は夫または妻の姓を名乗ることとしている。
それを、これまでのように夫婦同姓でもいいし、希望する場合は夫婦がそれぞれ結婚前の姓を名乗ることができるようにしようというものだ。
憲法にある個人の尊重、さらに男女平等の理念、戦後の女性の社会的進出をみると、時代の変化に即した対応といえるだろう。
選択的夫婦別姓制度は、1996年に法制審議会(法相の諮問機関)が導入を盛り込んだ民法改正要綱を答申したことにさかのぼる。
しかし、当時、与党だった自民党内で反対論が噴出し、国会提出は見送られた。以後、議員提案で度々、国会に出されたが廃案になった。
民主党中心の鳩山政権が誕生して、政府案として提出することも可能になった。
現状はほとんどの夫婦で、妻のほうが改姓している。しかし、夫婦共働きの家庭が増え、職場で通称として旧姓を使う女性が多くなってきている。
パスポートや運転免許証など戸籍名でなくてはならないケースがあり、二つの姓を使い分けなければならない不便さが法改正を求める背景にある。
家意識からの脱却や、改姓への抵抗感を理由に挙げる人たちもいる。
他方、夫婦や家族の一体感が薄らぐとの心配や、子どもによって姓が変わったり、親と姓が違うのではいじめられたりしないかなどの懸念から反対する意見も根強い。
世論調査では賛成、反対が拮抗(きっこう)し、意見は分かれている。
家族のきずなや一体感はとても大切だ。家意識にこだわるのは古いと一刀両断にできるものではないだろう。
外国では法律で夫婦同姓を義務づけている国は少数である。だからといって、日本がそれに合わせなければならないということもない。
家族のきずなや一体感は、姓が同じゆえに保てるものではない。どのように愛情豊かにはぐくむことができるかが肝要だ。
夫婦をすべて別姓とするわけではなく、希望する人には選択の自由を認めるというものだ。
子どもの姓は、夫婦どちらかの姓に統一する方向という。大人側だけではなく、子ども側の視点にも立ってより良い制度にしてほしい。
夫婦や家族についての考え方は個人の生き方、価値観にかかわる。改姓への抵抗感などから婚姻届を出さない事実婚の夫婦も増えているようだ。
国会で議論を深めてもらいたい。
[京都新聞 2010年01月16日掲載] |