約8年間にわたったインド洋での海上自衛隊による給油活動が終了した。北沢俊美防衛相が、現地にいる護衛艦と補給艦に撤収命令を出した。
「テロとの戦い」の名の下に、対米協力を優先し、自民・公明政権下で無理を重ねて派遣を続けてきたインド洋給油だ。憲法上の疑義や、国会の事前承認を必要としないこと、給油された燃料の使途のあいまいさなど多くの問題を含んでの活動だった。
改正新テロ対策特別措置法の期限切れを機に、鳩山由紀夫政権が撤収を決めたことは、その観点から見れば筋が通っている。アフガニスタン戦略を民生支援に切り替えたことも、一定の評価ができよう。今後の展開を考えれば日本の非戦闘的な立場が、紛争の仲介役を果たせる可能性もある。
一方で、国際テロ対策の面から見れば、前線からの一方的な離脱が国際協力上も日本の情報収集の上でもマイナスに響く恐れは無視できまい。
撤収でことが済む問題ではない。鳩山政権はこれを機に、国際テロに対する対策や自衛隊派遣の条件について、姿勢を明確にするべきだ。
8年間で米、英、パキスタンなど12カ国の艦船などに計938回、給油が行われた。派遣の是非に議論はあれ、海自隊員たちの努力は正当に評価したい。無償提供された燃料は計約51万キロリットル(約244億円)にのぼる。
アフガン情勢が泥沼化し、米軍など各国部隊の死傷者が増え続ける中で、日本の外交、防衛当局からは「安全で顔の見える国際貢献」として継続を望む声も強かった。だが法的に問題の多いなし崩し的な継続はよくない。
今回の撤収について、政府は給油のニーズが減っていることなどを理由としているが、こんなあいまいな説明では国民も納得できないし、諸外国の理解も得られまい。まずは8年間の総括を行ったうえで、今後の方針を国民に示す必要がある。
テロ対策もアフガンだけでない。ソマリア沖の海賊対策は国際的な関心事だし、先月の米デルタ機爆破未遂事件のように中東やアフリカを拠点とした新たな脅威も顕在化している。
日本にふさわしい国際貢献策について国民合意を形成し、国際的な認知度を高める努力も必要だろう。最貧国への民生支援は、テロの温床を減らす意味も持つし、国連の掲げる「人間の安全保障」にも合致する。医療、衛生など日本が得意とする分野も多い。
必要なら、国連平和維持活動(PKO)協力法の枠内で自衛隊を派遣する選択肢もあっていいだろう。
オバマ政権の誕生後、日本外交の2本柱とされている日米同盟と国際協調を相乗効果的に生かす条件は整っている。その点でも、日本らしい国際貢献策を推し進めるよい時期ではないか。
[京都新聞 2010年01月16日掲載] |