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「子ども不要」4割  総合的な支援策が要る

 これではますます少子化が進んでしまう。内閣府の男女共同参画社会に関する世論調査結果に、こんな思いを抱いた人が多かったのではないか。
 結婚しても必ずしも子どもを持つ必要はないか、との質問に「どちらかといえば」を含めて「賛成」と答えた人が42・8%もいた。
 過去最高で、2007年の前回調査に比べ6・0ポイントも増えた。
 さらに気になるのは、結婚前か、結婚後あまり年数がたっていない若い世代で賛成が多かったことだ。
 20代の女性に至っては68・2%と7割近くが賛成で、30代女性が61・4%で続く。女性全体では46・5%で、男性の38・7%を大きく上回る。
 1人の女性が産む子どもの数を示す合計特殊出生率を見るかぎり、06年に1・32と6年ぶりに上昇して以降、やや上向いてはいる。
 だが、若者層を中心に非正規社員が3割をとっくに超え、正社員並みに働いても生活に困るワーキングプア(働く貧困層)は増えるばかりだ。
 結婚や家庭についての意識が変わっただけでなく、低賃金と不安定な雇用を考えれば、子どもが欲しくても産めないのが実情ではないか。
 結婚について「してもしなくてもいい」とした人が7割を占めたのも同じことがあてはまりそうだ。
 対策を考えるうえで参考になるとみられるのが、女性が職業を持つことへの回答と行政への要望だ。
 「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」が45・9%と過去最高を更新したのに対し、「子どもができたら職業をやめ、大きくなったら再び職業を持つ方がよい」は、やや減って31・3%にとどまった。
 出産を機に仕事をやめる必要はないとの考えが広がっていることに加え、家計の状況からやめるわけにはいかないということかもしれない。
 それは、行政への要望で「子育てや介護中であっても仕事を続けられるような支援」が63・3%と、7・6ポイントも増えていることから推測される。
 行政の支援が実態に追いついていないということでもある。
 内閣府は10年度に改定される男女共同参画基本計画に有効な施策を盛り込みたいとしているが、それだけでは足りない。
 雇用不安を解消し、働きながら預けことのできる保育所の増設や放課後対策も要る。産科医を増やすなど、安心して子どもを産めるようにすることも欠かせない。
 鳩山政権の目玉政策である子ども手当は家計の助けになるが、継続できるかどうかがポイントになりそうだ。
 実情を知る自治体や企業とも連携、結婚や子育て支援についての総合的な施策が求められる。

[京都新聞 2010年01月15日掲載]

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