小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入問題が、ついに強制捜査に発展した。
東京地検特捜部が政治資金規正法違反(不記載)容疑で、陸山会や小沢氏の個人事務所、さらに大手ゼネコンの本社などを一斉捜索した。
参考人聴取の要請に応じない小沢氏に対し、特捜部が徹底解明の姿勢を鮮明にした。小沢氏は「法に触れるようなことをしたつもりはない」とあらためて違法性を否定したが、やましい点がないなら正々堂々と特捜部の聴取に応じればいいではないか。
陸山会が2004年10月、東京都内の土地を購入、簿外の現金4億円を代金支払いに充てたが、当時、同会の事務担当者だった石川知裕衆院議員が04年分の収支報告書に4億円の収入を記載しなかった疑いが持たれている。
捜査の焦点はこの4億円の出所だ。
小沢氏から現金を受け取ったという石川氏は「先生のたんす預金だったと思う」と話している。しかし、特捜部は国発注のダム工事参入をめぐるゼネコン側からの献金が原資の一部だった可能性があるとみる。
石川証言が真実ならば、小沢氏は4億円をどこから調達したのか。土地代金を自ら用意しながら、なぜ4億円もの融資を受ける必要があったのか。なぜ複雑な資金移動を繰り返す必要があったのか。疑念は尽きない。
特捜部は捜査を徹底し、真相解明を急いでほしい。ただ通常国会を間近にした時期に強制捜査に踏み切った意図は分かりにくく、一連の政治献金捜査で検察不信も根強い。検察は「国策捜査」のそしりを受けないよう節目をとらえ可能な限り国民に説明すべきだ。
小沢氏は「捜査中」を理由に事実関係の説明を避けている。共同通信社の世論調査で、小沢氏は説明責任を「果たしていない」との回答が85・4%に上った。国民の視線は厳しい。
民主党内で小沢氏は党代表の鳩山由紀夫首相をしのぐ「最高権力者」と目される。発言力を強め、政策決定でも重要な役回りを演じている。だからこそ誰にも増して「政治とカネ」について説明を尽くす責務がある。「国民に誤解を与えた」というのなら合理的な理由を示し説明してもらいたい。
18日に通常国会が始まる。自民党が小沢氏の議員辞職勧告決議案提出を検討するなど野党は徹底追及する構えだ。長引く不況で雇用や景気対策をはじめ課題山積の中、またも「政治とカネ」で国会審議を混乱させてはならない。国会の場でも小沢氏は自ら積極的に真相解明に協力すべきだ。
連立を組む社民党からも「説明責任を果たすべき」との声が上がっている。ところが、民主党内では小沢氏への配慮からか表だった批判が聞こえない。これも合点がいかない。
[京都新聞 2010年01月15日掲載] |