岡田克也外相がクリントン米国務長官とハワイで会談し、日米安全保障条約改定から今年で50年になるのを機に、日米同盟の深化に向けた協議を始めることで合意した。
日米安保は、日本の安全保障政策の基軸である。かつての冷戦は終結したが、代わってテロや核拡散などの脅威が姿を現した。新興国の台頭といった世界秩序の転換点を迎えたことも踏まえ、今後の両国の同盟関係をどう展開するのか。協議を行い、新たな礎を築くのは極めて有意義だ。
一方でクリントン氏は、懸案となっている米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)問題について、キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)に移設する日米合意の早期履行を重ねて要求するとともに、「現行計画こそが前へ進む最善の道だ」と述べた。
日本政府が約束を守らなければ、同盟深化はあり得ない、との意思表示であろう。
岡田外相は5月までに結論を出す方針を伝えて理解を求めたが、これでは日米関係は会談前と同じ状態にとどまり、進展がみられない。
外相会談は、条約改定に両国が署名した1月19日を前に、普天間問題でぎくしゃくする日米関係を取り繕うポーズを取っただけで終わったようだ。
会談では、19日に両国の外務、防衛の担当閣僚4人で同盟深化についての共同文書を発表。4人をメンバーとする日米安全保障協議委員会を今年前半に開催する方向で検討することでも合意した。
11月に横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に日米首脳会談を行い、最終報告をまとめる腹づもりだという。
思惑通り事が運べば、日米関係は再び良好な状態に戻るだろう。
しかし米側には、普天間移設の現行計画はアジア太平洋地域における米軍再編の最後の「詰め」であり、その決着前に同盟深化の具体論に踏み込むべきではない、との慎重論が根強く残っている。
移設先をめぐる日本側の論議は、政府と「県外か国外」を主張する社民、国民新両党の沖縄基地問題検討委員会が主導することとなった。平野博文官房長官が沖縄県を訪問するなど、外務省が関与しないところで作業が進んでいる。
結果は予想できず、先行きは不透明というしかない。
こうした状況を受けて、同盟の深化だけでなく、地球温暖化防止、核不拡散、感染症対策といった共通課題についても、日米の対話が滞っているように思われてならない。
鳩山由紀夫政権には、普天間問題の決着を図り、日米協議を実りあるものとするよう強く求めたい。
[京都新聞 2010年01月14日掲載] |