日本航空の再建問題は、私的整理を主張していた主力取引銀行3行が法的整理を受け入れ、政府の全面支援による再建の大枠がようやく固まった。
難航していた退職者の企業年金減額は、12日現在で3分の2以上の同意が得られた。鳩山由紀夫首相の要請を受けて京セラの稲盛和夫名誉会長も次期最高経営責任者(CEO)就任を受諾した。再建に向けた条件整備が大きく進み、日航は近く会社更生法の適用を申請する。
更生法申請の前に利害関係者が支援方法などを調整する「事前調整型」というソフトな方法が試みられたとはいえ、法的整理には負のイメージがつきまとう。金融機関だけでなく、取引先や株主への影響は避けられない。
だが、小手先の私的整理では再建がおぼつかないほど日航の経営状況は厳しい。巨額の公的資金を投入する以上は、公正さや透明性を確保する上から法的整理はやむを得ない。
支援機構は、国際・国内路線の廃止や縮小、人員の大幅削減、金融機関の債権放棄、支援機構の出資などによって、3年以内に再建させる計画を検討している。
だが、経営の重荷になっている国際線を中心とした運航のリストラにどこまで踏み込むかなど、新生日航の将来像はまだ明確でない。
個人株主が多い日航株をめぐり、100%減資で上場を廃止するとの支援機構の方針が伝えられると売り注文が殺到、2日連続でストップ安となるなどの混乱も生じている。
何よりも、法的整理に伴う信用不安の拡大や利用客離れを最小限に食い止めることが急務だ。
そのためには、政府が全面支援の姿勢を、声明などを通じて早急に打ち出すことだ。燃料など一般商取引の債権や顧客のマイレージ保護などのメッセージも素早く出す必要がある。日航機が就航する35の国・地域への丁寧な説明と協力要請も欠かせない。
とりわけ、法的整理を渋々受け入れた金融機関との連携強化は、再建計画を軌道に乗せる上できわめて重要だ。しこりを残したままでは、資金繰り面で絶えず不安を抱えることになろう。
政府にしても、新政権の発足以来、私的整理か法的整理か腰が定まらなかった。決断が遅れて金融機関を悩ませ企業イメージを傷つけた責任も感じるべきだ。
不況やテロの影響などで、航空業界は厳しい経営環境にある。再建は一筋縄ではいかない。競争に勝ち抜き、日航の翼を守るには官民一体の協力が不可欠だ。
同時に、航空会社の生命線は安全性の確保にあることを肝に銘じてもらいたい。数値目標だけのリストラでは真の信頼は得られない。
[京都新聞 2010年01月14日掲載] |