官邸機能と政治主導の強化のため、政府・民主党は首相補佐官を10人に倍増するとともに、副大臣や政務官を計15人増員する方針を決めた。
18日召集の通常国会で国家行政組織法や内閣法など関連法改正案の成立を図り、4月からの実施を目指す。
鳩山政権が打ち出す「脱官僚依存」の体制強化に一歩近づくとはいえ、どのような人材を起用するのかが肝心と言えよう。人選に注目したい。
首相補佐官の増員は、予算編成や米軍普天間飛行場移設をめぐって、鳩山由紀夫首相の迷走が目立ったこともあり、首相を支えるスタッフの強化が狙い。現行の法定枠の5人目として、近く同党の枝野幸男元政調会長を起用する予定だが、増員分の5人については民間から内政や外交、経済など各分野の専門家を充てるという。
いかに優秀なスタッフを確保できるかが鍵となる。加えて、なにより欠かせないのは、政権が目指す政策の方向性をコントロールできる首相自身の指導力や決断力ではないだろうか。
民主党は昨年夏の衆院選マニフェスト(政権公約)で、政府に入る国会議員を100人以上に増やし、「中央省庁の政策立案・決定を実質的に担う」と約束した。政権発足後、政務三役を中心に政策決定し、政治主導に取り組んできたものの、政務三役の負担は高まるばかりだ。
そこで政府側は30人程度の増員を目指した。しかし、一気に増やすと党務や国会運営に影響が出かねないため、当面は副大臣3人と政務官12人を増やすにとどめた。それでも現行の上限74人から最大で94人にまで増える。
要は、限られた与党内の人材をいかに効果的に配置するかだろう。民主党の小沢一郎幹事長は、国会運営重視を指示し、若手議員の起用に難色を示しているとされる。だが、政策立案などに卓越した若手議員もいる。ベテランにはない感覚を生かすべきだ。
また、増員する副大臣・政務官のうち、副大臣級1人を官房副長官とし、室から格上げを検討している「国家戦略局」の局長に充てる。政務官級の「国家戦略官」も新設する。
国家戦略室は、鳩山政権の「目玉」と注目されながら影が薄かった。体制強化によって政治家と政治任用スタッフ、官僚がそれぞれの持ち味を生かし、柔軟な発想で本来担うべき中長期の戦略策定に取り組んでもらいたい。
いずれにしても政治家だけでなく、官僚組織が動かなければ、政府の機能は停滞する。政治主導が前面に出すぎて、官僚たちの士気が低下しているとの指摘もある。官僚が政策立案能力や専門性に優れていることも正当に評価しつつ、政治主導の強化に向けて、官僚組織をうまく活用できる政治家たちの力量が問われている。
[京都新聞 2010年01月13日掲載] |