中国経済の力強い成長力を独創的なものづくりが得意な京都の中小企業の販路開拓につなげるため、京都府は産学公の連携で2010年度にも現地にビジネス支援拠点を開設する。
これまで培ってきた中国との技術・研究交流の実績を生かし、製造業に欠かせない試作や情報通信、環境分野などの受発注を仲介する狙いだ。
地方自治体が直接関与する中国市場の支援拠点は珍しいが、経済関連法が未整備で商習慣も異なる中国企業との取引はリスクも大きい。
府の産業支援機関である京都産業21が昨年11月に立ち上げた中国ビジネス研究会などの場を活用し、中国企業のニーズや課題の検証、事例研究を深めて、ビジネス成功のためのノウハウに磨きをかけるべきだ。
府は、ケータイ国際フォーラムの北京・天津市同時開催や日中ビジネス環境ミッションの北京、西安市などへの派遣を通じて、中国企業や行政との経済交流を深めてきた。
また、京都大や府内企業などが北京市のハイテクパークである中関村科技園区や清華大などと環境分野で産学連携の技術・研究交流を続けている。
ただ、中国ビジネスを着実に進める京セラやオムロンなどの大手企業に比べて、ヒト・モノ・カネの余力に乏しい中小企業にとっては、こうした経済交流が利益を生む商談に結びつくケースは数少ないのが実情だ。
世界的な景気後退の中で、中国は2けた近い経済成長を続けている。政府による家電購入支援などの強力な内需振興策を背景に、これまでの「世界の工場」から「世界の市場」としての可能性も広がってきた。
また、戦後日本のような経済発展が続くにつれ、環境や医療など京都企業が得手とする先端分野の技術、研究開発に対する需要も高まっている。
GDP(国内総生産)規模で、今年中に中国に世界2位の座を明け渡すのが確実な日本経済にとって、中国市場をどう取り込むかが喫緊の課題だ。
一方で、代金回収や顧客管理、知的財産の保護など中国ビジネスについて回るやっかいな課題は、一朝一夕には解決しそうにない。
その意味で、ビジネス支援拠点が先陣として果たすべき役割は重要だ。府内の中小企業が寄せる関心の高さの理由もまさにそこにある。
府は、上海市か北京市をビジネス拠点の設置場所に想定している。現地での取引経験豊富な日系企業OBらをスタッフに迎え、これまでの経済交流や人的ネットワークを生かした市場開拓を後押しする、としている。
府の中国ビジネス支援拠点が、日中双方の中小企業にとって有益で都合のよい「ウィンウィンの関係」を築く堅固な足場となるよう期待したい。
[京都新聞 2010年01月11日掲載] |