日本が韓国を植民地支配した日韓併合から今年で、100年を迎える。
鳩山由紀夫首相はこれを機に、年内に予定される李明博大統領の来日に向けて、両首脳による安全保障分野の共同宣言を検討する意向を示した。
アジア重視を掲げる鳩山政権は、日韓関係を「最も重要な隣国関係」と位置づける。核問題を抱える北朝鮮や軍事力を高める中国と隣接する日韓の強い連携は、アジアの安定のためにも不可欠だ。協議の進展を期待したい。
日韓は、良好な雰囲気となっても、歴史問題が持ち上がるたびに関係が冷えることの繰り返しだった。鳩山首相は昨年秋の韓国訪問で、「新政権は歴史を直視する勇気がある」と述べた。解決の具体策を示し、信頼関係の土壌を築く必要がある。安全保障や経済連携と、歴史問題の解決は車の両輪だ。
日本は、1910年の「日韓併合条約」から敗戦まで、皇民化政策や土地の接収、強制徴用で朝鮮の人々の自由と権利を奪った。65年に「日韓基本条約」を結び、戦後50年には侵略への反省を政府の公式見解「村山談話」で表した。98年には、21世紀への新たな関係を目指し「日韓共同宣言」をした。
それでも韓国では、日本人への不信が根強い。閣僚の靖国参拝や、戦後補償をめぐる日本の対応が報道されるたび激しい反日運動が起きている。
昨年末には、双方が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)をめぐり摩擦があった。文部科学省は公表した高校新学習要領の解説書で、直接的な記述を避けたが、文科相の「わが国固有の領土」発言もあって、韓国外相が「遺憾と憂慮」を表明した。
中学解説書への竹島記載が大きな問題になった一昨年に比べると抑えた反応だが、表現の工夫で問題回避するばかりでは、真の善隣外交は結べない。
両国民の間では、文化が先導して精神的な距離が縮まっているように見える。「韓流ブーム」はもちろん、韓国の青少年にはアニメ人気で日本への好感度が高い。成人対象の韓国紙の最近の調査でも、「日本人が嫌い」が35%と、4年前の63%から大きく減った。
これを追い風に、積年の政治課題の解決に本腰を入れたい。
歴史認識問題をめぐっては、2001年に日韓歴史共同研究に着手、昨秋第2期が終わったが、目立った成果は得られていない。「双方の教科書への反映」を明確に掲げ、組織のあり方や人選を練り直して再出発してほしい。討論の公開や市民参加を通し、進み具合を国民と共有する工夫も要る。
政府は今月開会の通常国会に、永住外国人の地方参政権付与に関する法案を提出する。永住外国人の半数弱、約42万人が朝鮮半島出身者と子孫だ。国会審議を、私たち自身が日韓の現代史を顧みて未来を考える好機にしたい。
[京都新聞 2010年01月11日掲載] |